第1章 『出会い』
呆れた。
ロイほどの錬金術師が、周りの天候すら目に入っていなかったというのだから呆れずして何をどうしろと…?
結局ロイの出番は無く、天候が関係なく戦闘のできる少佐の腕に任された。
「父さん。あれは本当に錬金術師と認めていいのだろうか…」
「ロイの事か?雨の日以外って限定しておいた方がよさそうだな。」
ガゥン―――!
と銃声が一つ響く、リザさんがスカーを狙って発砲したようだが、彼のサングラスを吹き飛ばしただけにとどまった。
「褐色の肌に赤目の…」
「イシュヴァールの民か!」
イシュヴァール。
ある事件を機に大規模な内乱へと発展した大変な遺恨を残した戦争。
7年にもおよぶ攻防の末軍上層部から下された作戦は、国家錬金術師を投入してのイシュヴァール殲滅戦。
戦場での実用性をためす意味合いもあったのだろう、多くの術師が人間兵器として駆り出された…
スカーはそのイシュヴァール人の生き残り。
「それで、国家錬金術師を目の敵に…」
僕の横で父さんが呟く。
スカーは歩が悪いと見て地下水道へ地面を破壊して逃走した。
「さ、そろそろ出て行って大丈夫だろう。」
「うん、そうだね。」
現場を収拾するために、中佐である父さんがロイの代わりに指示を飛ばす。
ざわつく現場に一人腰を抜かしたように座っているエドワード君の元へと向かった。
「無事かい?エドワード君。」
「え?あ…あぁ。あ、アルが!」
「アルフォンス君?」
突然、戦闘でぐっちゃぐちゃになっている細い道へ片腕で走りだしたエドワード君。
誰も彼を警護する人がいないので仕方なく僕がついていく。