第12章 『分解』 5
工房の中からは、エドワード君ともう一人若そうな男の声が聞こえる。
ただいまー。笑顔のウィンリィさんの後ろからガシ。とエドワード君を抑え込んだ。
「え?え?」
「ウィンリィさーん。これで?」
「いいわ!」
ごん・がん!
と激しい音が響く。
あは、あははは……
とにかく、無事にエドワード君の腕も直り、僕らは珍客も一緒に列車に乗り込んだ。
「へぇ、シンから。」
「ソう!」
隣の席で身長がどうとか、年齢がどうとか騒いでいたけれど、ようやく異国からの青年は僕に興味を持った。
「どうやってきたんだ?もしかして砂漠を?」
「砂漠越えはタイヘンだったヨ。」
「そりゃすごいね。」
砂漠から来たのなら、パスポート何て持ってないよねー。
「一応言っておくけど、何が目的か知らないけれど騒ぎを起こせば君なんて一発でお縄だよ?」
15歳でお付が二人。
ただものじゃないことぐらい何となくわかる。
お付もあのエドワード君の腕をへし折ってしまうような人ならば、警戒しておいて損は無いはずだ。
「この国の男は、荒っぽいというカ、なんというカ…」
「アンタが吹っかけて来たんだろ!先に!」
「ヤー!コワイー!」
ドタバタと煩い列車内で、目立たないようにとか、ゆっくり、とかの言葉は無縁だった。
ようやく付いたセントラルの駅。
今回は誰にも連絡を入れてないから迎えは無い。
「ただいま。セントラル。」
僕の呟きは誰にも届かない。
「さて、先に軍部に行ってみるか。ヒューズ中佐にも会えると良いな。」
「うん。」
「…あれから賢者の石の情報集めしてくれてるかな」
「うーん…どうかなぁ。大総統にくぎ刺されてるし。」
だから。
「父さんは居ないって言ってるじゃないか。」
「もしかしたら、帰って来てるかもしれないだろ。」
そんなわけないよ。
そうであってほしいけど。
いつの間にかリンの姿が無かったが、気にするほどの事でもないだろう。
探そうと思えばすぐ見つかるさ。
僕らは、一先ず軍へと向かう。