第12章 『分解』 5
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「エリシア、良い子にできたか?」
『うん!にいちゃの言う事守ったよ!』
「お土産買って行くからね。さ、母さんに代わって。」
エリシアの元気な声を聞くだけで、嫌な事も全部忘れちゃうね。
…はは、だんだん父さん見たくなって来てる。
『ビーネ。代わったわ。』
「あぁ、母さん。今日の列車か、明日の列車に乗って中央に戻ることにしたよ。」
『あら、案外早かったのね。』
「いや、薬は中途半端さ。戻ってからまた調べる。…その、父さんは?」
『意識は戻らないわ。他は問題ないそうなんだけれど。』
母さんは「駄目だ」とは言わなかった。
今日明日には帰る。とだけもう一度伝え電話を切った。
荷物はすべてガーフィールさんの工房に置いて来てしまった。
一人、大通りを歩いていると見知った後ろ姿を見つけ、手に持っていた荷物を奪い取りながら、話しかける。
「ウィンリィさん!これは、エドワード君の腕?」
「ビーネさん!びっくりした!そうですよ。」
中を覗けば、何に使うのかわからないネジやパーツが入っていた。
「まったく。あいつはいつもいつも壊してくるから、直す方も大変なんだって、伝えてくれませんか?」
「ははは。んー、僕、エドワード君にあんまり好かれてないって言うか…アルフォンスとは仲良くなったんだけどねぇ。」
「へぇ!そうなんですか。…………ねぇ、あれ。」
突然ウィンリィさんが足を止め、指を挿したのは、何となくその人の感性を臭わせる拘束器具。
幼馴染であるウィンリィさんは一瞬で気がついたようだった。
「あ、あー……僕。直してきます。」
荷物を渡し、周りを構成していたであろうものでつくられたその物体を、囲む野次馬を押しのけ、律儀に錬成陣を書いて直してあげた。
「あれ、エドよね?」
「だね。」
「また、暴れたってことよね?」
「だね。」
「もしかしたら、腕を完全に壊したかもしれないってことよね?」
「あなたの考えに賛同します。」
不機嫌で先頭を歩くウィンリィさん。
危うく荷物を握りつぶすところだったので、荷物は僕が持っている。
「いい。ビーネさん。」
「えぇ、わかっております。お嬢様。」
「あいつを見つけたら即座に捕まえるのよ!」
「もちろんでございます。」
……なに?触らぬ神にたたりなしって言葉知ってるでしょ?
まさにそれ。