第12章 『分解』 5
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「大佐、外部からお電話です。」
慣れない部屋で慣れないデスクワーク。
不意に鳴った電話に少し救われた気分になった。
「私だ。」
『私?僕はロイ・マスタング大佐に電話を掛けたんだけど。』
「ロイ・マスタングだ。ハニー、いちいち突っかかるのはよしてくれたまえ。」
『悪いな。癖で。』
以前中央で会った時よりはだいぶ元気にしているようだ。
中央に移動してきた時、彼には会う事は出来なかった。
「…元気か?今、何処にいる。」
『元気ではいるよ。今はラッシュバレー。今日か明日には中央に戻る。…どう?中央のイスは。』
「あぁ、しっくりくる。」
アームストロング少佐が、意味深に彼らがまだ旅を続けていると言っていた。
彼も、ヒューズの事件をきっかけに彼らの後を追う様に中央を飛び出したと聞いた。
『はは、戻ったら、ロイの座っている所を拝見しに行くよ。じゃぁ、また。』
「あぁ。戻ったら食事でも行こう。」
何かを臭わすような事は言わない。
彼は、彼の父親がどのようにしてあのような状態に陥ったのかを、しっかりと理解し慎重だ。
ガチャン。と切れた電話の後には、少しばかしやりきれない思いが残った。
「ビーネ君、元気そうでしたか?」
「憎まれ口が増していたよ。随分と良い旅行をしているようだ。」
「そう、ですか。」
中尉は少し顔を曇らせる。
彼女はいつだって、幼かった彼の事を心配し世話を焼いていた。
身を守るために拳銃の使い方を教えたり、身の隠し方を教えたり…。
「今日か明日には旅行から戻るそうだ。みんなで食事、どうかね?」
「いいですね。もちろん大佐のおごりで。」
「…任せて置きたまえ。」
ハニーは嫌がるだろうか。
いや。あいつも少し、心配をされていることを理解してもらわなければな。
大人ぶってはいるが、子供だとわからせてやらなければ。