第12章 『分解』 5
今、彼らに父さんの事を知られる訳にはいかない。
賢者の石をそれにかかわることすべてを追うことで、ああなってしまうのなら、もしかしたら彼らは追う事を辞めてしまうかもしれない。
「そうだ、兄さん!ヒューズ中佐!」
「おぉそうだ!俺も入院の時世話になったし、挨拶しとかねェと。」
「あ…でもあたし、仕事が…」
「良いわよ!ウィンリィちゃん、こっち着てから休みなく働いているもの。たまには息抜きしてらっしゃいな。」
「ありがとうガーフィールさん!」
僕が彼らを自分の都合の良い駒のように扱っていることを知ったら、せっかく仲良くなったアルフォンスにも嫌われるな。
でも、それでも僕は、父さんの身体を元に戻す方法が知りたい。
「じゃ、みんなで行くか!」
「あー、いや。僕の家はいいよ。父さん今中央に居ないし、母さん体調がすぐれなくて、だから僕伝えておくよ。」
「あ、そうなんだ…じゃぁ、お花を渡すくらいなら大丈夫かな?」
「うーん……それなら大丈夫だと思う。でも、父さんは中央には居ないからね?」
「まぁ、ちょこっと顔出すくらいにしておこうぜ。」
そうだった。
彼らは優しくて、お節介な人たちだった。
心配するような事を言えば、助けになれるよう努力する人たちだった。
だから余計に、僕の心が痛む。
「僕、街を歩いてくるよ。」
「じゃぁ、ボクもついてくよ!」
「いや、一人で少し歩いてくる。」
突き放したわけじゃない。ただ、心の整理がつかないんだ。
エドワード君達に、なぜ父さんを巻き込んだ。と怒鳴りつけても良かった。
一切この事を知らせず、僕が一人でそれについて追う事も出来た。
非道に、アルフォンスを餌に奴らを誘い出し、交換条件で情報を得ることだって出来た筈だ。
………。
ラッシュバレーの街は活気がある。
男も女も機械鎧をつけている者が多い。
戦争の傷跡が右を見ても左を見ても、目に入る。
いつの間にか駅に戻ってきていた。
ベンチに座り、街を眺める。
「何がしたかったんだ、僕は。」
現実から遠ざかろうとしている。
父さん。
……父さん。
…………………奴らが憎い。
「少年。列車には乗らないのか?」
「…のらねぇ。人、待ってんだ。」
「待ってるって、少年さっき列車から降りて来てたじゃないか。」
「……うるせぇ。」
むしゃくしゃする。
何もかも無かったことにしたい。