第11章 『分解』 4
「…生け捕りにする必要がなかった。んじゃないかな?」
「どうして?」
エドワード君は僕の声に思考を邪魔され不機嫌になる。
一方アルは僕の言葉を期待し、促す。
……僕もこんな弟が欲しかったな。
「グリードに対して、一般の憲兵じゃ敵わなかっただろう。錬金術師か、学者かのどちらかを有した軍でなければ敗戦は目に見えていた。」
「その点は俺がいたから問題はねーだろ。」
むっとした顔のまま、拗ねたようにそういうエドワード君。
「でも、軍は君が南に居ることを知らなかった。大体、ダブリスまで大総統が来る時点で気がつくべきだったんだ。――――狙いはグリードを殺す事。」
きょとん。とするエドワード君とアル。
しかし、頭の回転が速い彼らは話しの呑み込みが早かった。
「つまり、もともと大総統がやってきたのはウロボロスの人間がいるからってこと?でも、ビーネも知らなかったじゃないか。ウロボロスがここにいることを。」
「ほら、何日か前に変な奴に絡まれただろ?アルの首を吹っ飛ばした。」
「そうか、あいつも仲間なら……」
要するに裏と繋がっていたのは軍だったという構造になる。
「ウロボロス・グリードが賢者の石を追う僕らと接触することを事前に知っていたとする。接触されてはまずいことがある。ならば、接触する前に何らかの理由をつけてここを訪れ、グリードを口止めする。」
僕の推測にしか過ぎない考え。
エドワード君も顎に手を添え深く考え込む。
「…ウロボロスは何らかの形で軍と繋がってる。ってことか。……賢者の石、ウロボロス、軍……どうにも腑に落ちないことばかりだ。」
「灯台下暗しってこともある。戻ってみるか。」
「賢者の石の情報が拾えるかもしれないね!」
次なる目標を見つけ、俄然やる気になる兄弟。
「よーし、そうと決まれば…腹ごしらえだ!師匠!腹が減りました!」
でかい声をあげながら、肉屋の方へと入っていくエドワード君。
イズミさんの怒鳴り声と共に、ガコーン!と頭で鍋を受け止めるエドワード君がいた。
・・・