第11章 『分解』 4
「…正直者だな、引き上げるぞ。君のその弟。大切にしたまえよ。」
相変わらず掴みどころのない頭だ。
大総統の去り際を感じ、アームストロング少佐の横で敬礼をして見送る。
エドワード君も慌てて敬礼をして居住まいを正す。
大総統が見えなくなりようやく腕を降ろす。
「アームストロング少佐。怪我の方は大丈夫ですか?」
「うむ!問題ない。ヒューズ少佐は…無事、なようですな。」
「えぇ。」
少佐の舐めるような視線。
コートが多少汚れているくらい。
畏怖のような尊敬のような視線を受けながら、僕はアルフォンスの横をエドワード君と共に歩く。
「イズミさん。怒ってるかな?」
「あ、だ、だ、大丈夫だよ、きっと…」
「ははは。まぁ、アル、無事で何より。」
「うん。ありがとう。」
無事にエルリック兄弟を連れ帰り、げんこつの刑は免れ、心からホッとしたのは僕だけの秘密だ。
デビルズネストから戻ってきて早速。
僕らはガッシャガッシャと大きな音を立てながら、アルフォンスの鎧を磨く。
「よーし!綺麗になったぞ!」
一先ず先に身体を綺麗にしたエドワード君と僕。
何か考え事にふけるアルフォンスのために一生懸命血痕をふき取る。
「……大丈夫か?」
「あ…うん。ちょっと混乱してるだけ。」
混乱。というアル。
エドワード君も疑問に思い、問いかける。
「ボクの身体があっちに持って行かれた時の記憶が戻ったんだ。」
かねてから計画していたアルの記憶を取り戻す計画。
あっさりと解決したようでなにより。
真理の腕をフラダンスのように表現する兄弟はなんだかんだ言って面白い。
「――…結局、進歩なしかぁ。」
「いや、そうでもないさ。」
僕が磨き終えたアルの鎧を、エドワード君がアルに装着しながらそう言った。
「中央の病院での事、覚えてるか?ウロボロスの入れ墨を持つ奴らと賢者の石。」
「うん…大総統が言うには、それらにかかわって、内部で不穏な動きがあって、そいつらの尻尾を掴みたいって。」
眉間にしわを寄せ、歳に似合わない難しい顔をするエドワード君。
内部での不穏な動き。そんなのは日常茶飯事であり、都合の良いいいわけにしか聞こえないのは僕だけだろうか。
「だったら、なぜ奴らを皆殺しにする必要があったんだ?尻尾を掴みたいなら生け捕りにして吐かせればいい。」