第11章 『分解』 4
「みんな、少しの喉の渇きぐらいは我慢してよね。」
そう言って両手を合わせるビーネ。
そうか、こいつも見たんだったな。
「こんな一つの空間に散布する水分なんて、たかが知れてるよね。カラカラに乾いた状態でさ。火、つけたらどうなる?」
話しながらも彼の足元にはじゃぶじゃぶと水が湧いて出ているように見える。
「そりゃぁ、よく燃えるだろうな。」
「正解。」
じゃ、やって見ようか。
とポケットからライターを取り出し、かちりと火をつける。
火はあっという間に木くずに燃え移り激しく燃える。
「なにやってんだよ!俺たちまでっ」
火を消そうとしたが、またも両手を合わせ錬成反応を見せるやつの周り。
次の瞬間には思い切り水を被っていた。
「エドワード君。騒いだら酸素がなくなるから黙ってろ。」
奴の言葉に従って、バタバタするのを辞めた。顔に掛かった水を拭えば、目の前にいるはずのグリードが揺らめいていた。
これは、水の壁?
壁は四方に張り巡らされ、外界と隔たれていた。
「でさ。そこにさらに酸素を足すとどうなる?」
奴は冷静な顔をして、もう一度手を合わせる。その瞬間水の壁の向こうのグリードが炎に包まれた。
しばらくその状態を保って、また錬成を行う。
次は俺たちを囲っていた四角い水を分散させ、グリードに水をかぶせ、火を消した。
「くっ……てめぇっ!」
「動くなって。な。」
グリードの動きに合わせて、また錬成を行う。
次はグリードの身体が凍り始めた。
「いくら硬化しようったって。僕の前じゃ無意味。その盾を剥ぐことは僕にとっては簡単だから。いや。僕ら。かな。」
「ちっ。」
「それに、あなたは硬化と再生を一緒にはできない。そうでしょ?」
こいつはグリードの炭素でできた盾を焼いて蒸発させた。
水を構成する水素と酸素のバランスを利用し、この部屋の水分を俺たちの方へ寄せて、グリードの所の湿度を限りなく0にする。
そうすれば、自ずと火はそちらに向く。
そこに酸素を足して火力をあげ、一気に焼き上げたのか。