第11章 『分解』 4
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ヒューズの回し蹴りを見た時。
戦慄を覚えた。
ふらりと身体を動かしただけのように見えたのに、足が空を切る音が聞こえ、次の瞬間にはグリードがコンクリを破壊しながら左半身をめり込ませていた。
強ぇ。
だけど、奴はグリードのパンチを浴びて伸びているのか、ただ痛みで動けないのか、地面に倒れたまま動かない。
何度も何度もグリードに立ち向かうが全く歯が立たない。
「死んだか?」
錬成した刃も折れ、機械鎧もほとんど壊れた。
体もあちこち痛いし、血も結構流した。
「ぺっ!」
踏ん張って立ち上がる。
まず、立ち上がる。
「よし、いいぞ。子供は元気でなくちゃな。」
もう、こうなりゃ意地だ。
右腕を持ちあげ、グリードの頬へと叩きこむ。
しかし、ガツン。と固い音がするだけで、何のダメージにもなっていない。
「何度やっても、お前は俺に勝てねェよ。」
終いには顔面を掴まれ、投げ飛ばされた。
何処かの何かに当たり、また痛みが来るのだと思った。
バシャーン!
バシャン?あれ、あったかい?
「まぁまぁ、よくも僕のお友達をこんなになるまで遊んでくれちゃって。」
「生きてたのか、兄ちゃん。」
「えぇ、兄ちゃん生きてました。」
俺の身体を包みこんでいるのはお湯。
それも、体温より少し高いくらいのお湯。
パン!と叩く音が聞こえると、一瞬でお湯は無くなり、ぽかぽかと暖かい俺の乾いた身体だけが残った。
「血。止まった?」
「あ………うん。」
「あーあ。エドワード君ボロボロになっちゃった。こりゃイズミさんに叱られるなぁ。」
呑気な声とは裏腹に、奴の視線は鋭く真っ黒なグリードを見据えていた。