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七色の雫 ~生きる道の再構築~

第11章 『分解』   4



ねぇ。と言いながらグリードを振り返ると見せかけて、全体重を乗せて思い切りグリードの首元を狙って回し蹴りを放つ。
グリードはいとも簡単に吹っ飛び、コンクリートの壁に左半身をめり込ませていた。

「ほら、ね?」

蹴りを入れた時の第一印象は「軽い」。最強の盾を持っているのなら成人男性の体重以上はあってもいいとは思っていた。
しかし、思い切り…むしろ過剰に力を込め過ぎて予想以上の威力となってしまった。

「――――っつ。兄ちゃん、良い足してんなぁ。」

グリードは再生をしながら、壁を離れこちらに戻ってくる。
もう一発お見舞いしてみたが、次のは生身の腕で防がれた。
……生身?

「エドワード君。二人でなら腕以外の所が狙えて、不死身じゃないなら、何度も殴ればなんとかなると思わない?」
「よそ見たぁ、いい度胸だなぁ!」
「いや、煩いよ。グリードさん。」

拳を握って突っ込んで来たグリード。
固い物を素手でいなすのはさすがに無理なので、短剣を取り出し自分の身体に当たらないようにいなす。
僕の言葉に我に返ったエドワード君は、すぐさまグリードに向かって刃を振りかざす。
反撃の隙は与えない。
エドワード君の背中から、短剣をグリードの眉間に向けて投げるが、防がれる。
お互い様子を探りながらの攻防が続いた。
すると、突然グリードが笑い始める。

「がっはっはっは!悪かったなぁ、手抜きしちまって。」

手抜き……どういう事。

「ちょっとブ男になるんで、あんま、見せたくねぇんだよこれ。」

ばさりと上着を脱いだグリード。
その身体は見る見るうちに硬化し、黒い得体のしれない物に変化した。
……最強の盾の本当の姿か。

「言っただろ?お前は傷一つつけることができねぇ。」

錬金術の域を超えてるんじゃないかと思わせる変貌ぶり。
仕方ない、対錬金術師の頭を、対化け物に切り替えて、錬金術も駆使した対策を練るしかないな。

「まずは、アンタからだ。せっかくのイケメンなのになぁ!」

グリードの拳が振られるのと、僕が腕でガードを作ったのはほぼ同時。
相手の腕が硬質だったことを思い出したのは、ぶん殴られた後だった。

ちょうどいいや。
少し、このまま大人しくさせてもらおう。





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