そしてこの道が続いたら【Mr.FULLSWING】
第1章 ヒロインサイド
「みんなの応援は嬉しいんだけどさー!」
あたしは相変わらず机でじたばた悶える。
告白の台詞だの、可愛く見せるメイクだの、あたしをより良く見せるようアドバイスしてくれたり
どこどこに寄るだの、辰羅川と話があるだの、わざわざ2人きりにしてくれて嬉しい。
なのにいざ本番となると、どうしてもテンパってしまう。
「2人きりなんてもう!もう!胸が!」
張り裂けそうで!
口が渇いて会話も出来なくて!
嬉しいのに逃げ出したくて!
あたしらしくないけど乙女になっちゃうんだよー!!
「四の五の言ってんじゃねーよ!」
猿野の叱咤でハッと顔を上げる。
「何もしないでどう進むっつーんだ!?お前このままでいいのかよ!?
いつまでもこのままいられると思ったら大間違いだぞ!?
こちとら何もやらずに後悔する××なんて見たくねーんだよ!!」
「猿野・・・。」
猿野の言葉が胸に刺さる。
そうだ。いつまでもこのままなんて無理なんだ。
あたしはどうなりたいんだ?
ただの友達で終わりたいわけ?
違う。あたしが望んでいるのはそれ以上の関係。
なれるはずない、高望みだってのは分かってる。
でもせめて、この気持ちを伝えたい。
やらずに後悔するより、やって後悔したい。
想いを伝えるって決意したんだ。
迷うな。一歩踏み出せ。
「猿野君の言う通りですよ。」
「たっつん!?」
突然現れたのは、犬飼君を引き止めているはずの辰羅川。
「先ほど犬飼君に聞かれました。
最近××さんと2人で帰ることが多いけれど、皆様は何をなさっているのかと。」
みんながそれぞれ目配せして思いを確かめる。
「・・・もう限界ってことっすね。」
「子津君の仰る通りです。」
みんなの視線があたしに集中する。
言われなくても分かってるよ。
「今日で決めろよ!」
「うん!決める!」
あたしは力一杯立ち上がる。
「骨は拾ってね!」
「大丈夫だって!上手くいく!」
みんなの顔が嬉しそうだった。
たとえお世辞でも、今のあたしにはその言葉が嬉しかった。