そしてこの道が続いたら【Mr.FULLSWING】
第4章 外野組
駅近くの誰もいない公園。
犬飼と○○はベンチに並んで座っていた。
少しおかしい点と言えば、○○が犬飼の腕を掴んでいるところだろうか。
「犬飼君、落ち着いた?」
「え、あ・・・。」
××に触られているから心臓がやべえ。
なんて犬飼には言えるはずも無いのだが。
とにもかくにも、犬飼は息も絶え絶えに掴まれている左腕を振った。
「え?・・・あっ!ご、ごめん!」
ようやく気付いたらしい○○はすぐさま掴んでいた手を離す。
犬飼は固まったままではあれど、ようやく一息つけると小さく息を吐いた。
少し、沈黙が流れる。
しかしふわりと通り過ぎる風が心地よかった。
遠くから電車の音が聞こえた。
「・・・電車、大丈夫か?」
どうにか回復した犬飼が心配そうに尋ねる。
「あ、うん。1時間も待てば次のが来るよ。」
「そんなに待つのか。」
「田舎は山手線のようには行かないよね。」
はははっと乾いた声で笑う○○。
1時間待つということは、あと1時間は2人で話せるのか。
告白のタイムリミットは1時間。それまでに決める。
「・・・犬飼君の家はここから近いの?」
「あと5分も歩けば着く。」
「へぇーそうなんだ。近くていいね。」
「・・・。」
「・・・。」
やべぇ。今からこんなに黙るなんて。あと1時間あるんだぞ?
あぁどうしよう!どのタイミングで言えばいいの!?
お互いの緊張など知らない2人は、相手の出方を待つように何度も会話と沈黙を繰り返した。