第11章 人の話は最後まで聞くべし【沖田視点】
- 結衣の口からお前が好きっつーまで認めてなんかやるかよ -
旦那…あいつが俺にんなこと言うわけねェですよ…
あいつが好きなのはアンタでも、
俺でも…ねェんだから。
『沖田隊長ォおおお!!起きてください!』
「…」
勢いよく開かれた襖に内心驚き、慌てて狸寝入りをした
『あの、沖田隊長…もう6時過ぎてますよ!』
しばらくするとだんだんとこちらへ近づく足音が聞こえる
俺のすぐ隣まで来ると大石はそっと着けていたアイマスクを持ち上げる
…つーか何してんでィこいつは…。
『沖田隊長ー起きてください』
軽く布団を揺さぶられたが、それからは何をするわけでもなく黙って俺を見下ろす
そんな彼女の視線に耐えきれなくなった俺は大石の腕を引っ張り先程まで俺が寝ていた布団に押し付けた
『ぎゃッ』
相変わらず色気のない声だが大石を見下ろすこの体勢は思いのほか気分が良かった
「人様の寝込み襲うなんて随分大胆な雌ブタじゃねーかィ」
『…誰が豚ですか。副長に頼まれて起こしに来ただけです…重いんで早くどいてください』
…ほらね、旦那。
「チッ、ちっとは動揺すると思ったのに…平然としてつまんね」
やっぱりこいつが俺を意識するわけねェんだ。
そっと大石から離れると彼女もすばやく起き上がり俺を睨んだ
『早く起きないと副長に怒られますよ』
「わかってらァ、かあちゃんかテメーは」
『隊士の責任はその隊のみんなの責任になるんです!』
「その台詞そのまんまいつものオメーに言ってやりてェ…つか何で今日はんなに早起きなんでィ」
『それはその…たまたまです!』
…まただ。
またそのカオ…
何でそんな無理して笑うんだ
何で…もっと俺を頼らねェんだ…。
こいつのこんな表情を見る度、俺は自分が無力に感じる…。
俺では…アイツの、平河の代わりにはなれねェのか。
『と、とにかく早く起きて下さいね!では!!』
ピシッと俺を指差し部屋を出ていく後ろ姿を俺は黙って見つめることしか出来なかった