第11章 人の話は最後まで聞くべし【沖田視点】

｢どうしてこうなっちまったんですかねェ旦那…｣




｢……何が？｣


｢何がって…俺の話聞いてなかったんですかィ？｣


｢いや聞いてたようん。でも君がちょっと何言ってるのかわからなくてね｣


そう言って目の前のおでんに手をつける旦那を俺は無表情で見つめた


巡回中、俺は偶然にもこのおでん屋の屋台に入っていく万事屋の旦那を見つけた為、隣に腰掛け旦那に声をかけた

｢つか何なの、さっきから誰の話してんの沖田君｣

｢だから大石ですよ、大石｣

俺の口から出た名前に旦那はわかりやすいくらいビクっと反応する


｢あ、あぁー…結衣ね。そういや最近は会ってねェな〜…どうしたの？また何かやらかしたのか｣

｢いやあいつは別にいつも通りですぜ、そうじゃなくて俺が…｣

｢ぁあ、また屯所で女らしくねェことしてんだろ？ったく仕方ねェなアイツも！！｣

｢いやだから俺がですねィ…｣

｢お前が苦労してるって話だろ？
わかったわかった、今度あいつに会ったらちゃんと説教しとくから！！｣

｢…旦那、わざとやってます？｣

そう言って見つめると顔に汗を掻いて旦那は顔を引きつらせた

｢な、なにが〜？｣

｢旦那、以前俺に大石に惚れてるのかって聞きましたよねィ、旦那…俺ひょっとしたらアイツのこと…｣

｢違うな。｣






｢…いやまだ何も言ってねェんですが。｣

｢いや言わなくてもわかるよ、でもそれはきっとお前の勘違いだ。うん、絶対違うね！｣

腕を組んで頷く旦那を横目に俺は目の前のおでんに箸を伸ばす


｢別に俺だって最初はありえねェと思ったんですぜ？｣


それだけはねェって思ってたのに…。


" 沖田隊長！ "


あいつがあまりにも俺の心を掻き乱すから


知る必要もなかったはずの気持ちがどんどん強くなった。


気づけばアイツを自然と目で追う自分がいた。


｢それからまぁ…色々あって、もうこれは恋しかねェと思いやしてね｣
｢いやもっと他にあんだろうが色々！！｣

そう言って旦那はドスッとビール瓶をテーブルに置いた