第10章 再会が必ずしも良い事とは限らない
屯所への道を沖田隊長と並んで歩いている途中、私はふと疑問に思ったことを彼に話した
『あの…沖田隊長』
「あ?」
『あの店員さんと知り合いだったんですか?』
「あぁ…まあな」
沖田隊長は歩く足を止めることなく話した
「…夏目 雪、彼女は以前起きた事件の被害者だった人でさァ」
『以前起きた…事件?』
「あれは確か4年前だから…まだお前が屯所に来る前の事件だな…。知ってるか、令嬢誘拐事件」
『あ、聞いたことあります。確か当時テロやら誘拐事件が多発していて…主に幕府のお偉いさんやその令嬢が狙われていたと』
確か平河隊長もその任務に関わったって言ってた…。
「あぁ、あのお雪さんもその事件の被害者だったんでィ。…んでその事件当時彼女を救出したのが俺だったって話でさァ」
『!じゃああの人は…夏目財閥の令嬢!?』
「あぁ」
『でも…そんなお嬢様がどうしてあんなとこで店を?』
「彼女の両親は当時の事件で命を落としてる。身寄りもない彼女がこの時代大通りを歩いて天人に見つかっちまったら狙われる可能性もなくはねェだろィ?」
確かに…今はなくとも元財閥の娘であったとすればお雪さんは数少ない生き残りということになる。
血縁やDNAから考えれば彼女は貴重な存在、天人による人身売買もありえる…。
『だからあんな路地の奥に住んでるんですね…』
私の言葉に沖田隊長は黙って頷いた
そうか…だからあの時
- 恋人を攘夷浪士に殺されたとか -
あんな悲しい目をしていたのだろうか。
俯く私を沖田隊長は不思議そうに見つめた
「…まだ気になることがあんのかィ?」
『いえ、何でもありません』
そう言って微笑むと沖田隊長は携帯を開いた
「あと30分くらいあるな…屯所ももうすぐそこだし、お前…喉渇いてねェかィ?」
『えっ、あぁ…少し』
「んじゃここで待っててやるから好きなの買ってきなせェ」
『沖田隊長…』
「当然だろィ
俺の分もお前の金なんだから」
『ですよね!!』
そう言えば平河隊長からこの事件のこと…あまり詳しくは聞かせてもらえなかったな…。
死者も多く出た事件だ…あまり堂々と話すことでもないか。
でも…彼があまり話さなかったのは…本当にそれだけだったのかな。