第10章 再会が必ずしも良い事とは限らない
「美味しいって言ってもらえて良かったわ」
私と隊長の座るテーブルまで来た美人店員さんが言った
『はい、あの…とても美味しいです!』
「ありがとう。大石結衣ちゃんね?総悟くんから聞いてるわ、あなたも真選組の隊士さんなのね」
そ、総悟くん…。
『あ…はい』
「女の子なのに…大変ね」
『いえ…』
「それに総悟くんと同い年なんでしょう?まだ若いのに真選組隊士なんて危険な仕事して…」
『まぁ…』
「何かわけがあるのかしら」
『え…えっと』
「幼い時に両親が亡くなったとか、」
『あ、いえ、両親…は』
「剣術に優れていてスカウトされたのかしら?」
『そういうわけでは…』
「それとも…
恋人が攘夷浪士に殺された…とか」
『…ッ』
女の人のどこか冷めた鋭い視線に何も言えなくなった
しかし次の瞬間
「そろそろ勘定いいですかィ?」
突然立ち上がって店員さんにお金を渡す沖田隊長
「あら、もう帰るの?もっとゆっくりしていったらいいのに」
「実は今日仕事サボって来てるんでねィ、早く屯所に帰らねェと土方さんに怒られちまう」
そう言って沖田隊長は私の腕を掴み店を後にした
「結衣ちゃんもまたいらしてね」
笑顔で手を振る店員さんに会釈して、沖田隊長に腕を引かれるがまま帰り道を歩いた
そうしてしばらくすると沖田隊長は掴んでいた私の腕を離した
『あの隊長…ありがとうございます』
あの時…きっと私の気持ちを考えてああ言ってくれたんだ。
口に出しては言わないけど、沖田隊長は本当は優しいから…平河隊長の話をしたら私が落ち込むと思ったんだ…。
「神山に5時には戻るって言っちまったからなァ…土方さんが見回りから戻って来るまでに帰らねェと始末書だぜィ」
…あれ、
「オメーも、俺に書かされたくねェだろィ?」
『……そうですね』
やっぱり気のせいだったのかもしれない。