第10章 再会が必ずしも良い事とは限らない
「お、あったあった甘味屋」
しばらく歩いた先で沖田隊長が指差すその店は何処か懐かしい雰囲気の小さな甘味屋だった
『こんな路地の奥に…』
「ま、知る人ぞ知るって奴でさァ。なかなか美味いらしいぜィ」
『へぇ!』
店の中に入ると美人で優しそうな女の人が迎えてくれた
「いらっしゃい」
『ど、どうも…』
店の雰囲気とよく合うその容姿に少し見惚れていると沖田隊長が言った
「お前は適当に席に座っときなせェ、餡蜜は俺が買っといてやらァ」
『あ、はい…』
言われるがまま席に座り、女店員さんと話す沖田隊長を見つめた
話の内容まではわからないけど、2人とも楽しそうだ
『…。』
沖田隊長…あの人と知り合いなのかなぁ。
まぁ、沖田隊長見た目はアレだし、顔広いし知っててもおかしくないよね。
そういえば、私…沖田隊長のことあんまり知らないな。
仕事中や屯所の中での彼は知ってるけど、それ以外の彼はあんまり知らない…。
2人で話していても沖田隊長は私のことばっかで自分のことは話さないし…こんなに近くにいるのに知らないことが多い
なんか…ちょっと…
って…
いかんいかんいかんいかん!!
私は再び近くの柱に頭を打ち付けた
何考えてんの私!!
別に沖田隊長が私の知らないとこで誰と話してようが関係ないし、毎日屯所で顔合わせてるんだから寂しいとかありえないでしょ!!
「…何してんでィ」
『あ、いえ!な…何でもないです』
そう言って苦笑いして沖田隊長が持ってきた餡蜜に目を向けた
『わ、わぁ!美味しそう!!』
「食っていいぜィ」
『いただきます!』
目の前の餡蜜を一口食べる
『美味しいッ〜!!』
何だろこの懐かしい味!
ふわっと口の中でとろけて今まで食べた餡蜜の中で一番かもしれない。
「美味ェかィ?」
『はい!すごく美味しいです!!』
そう言って笑うと沖田隊長は今まで見たことのないような優しい顔で私を見つめた
『ッ…』
何だか急に恥ずかしくなってきた私は慌てて彼から目を逸らした
わ…笑った。
沖田隊長のあんな顔…
はじめてみた。
もうとっくに鳴り止んだはずの胸の鼓動が
また少し速くなる