第9章 何気ない事で人の心は動かされる
帰り道を沖田隊長と並んで歩いているが、
私はさっきから沖田隊長の頬の傷が気になって仕方がなかった
そんな私の視線を感じ沖田隊長は歩く足を止めた
「オイ…きめェからあんまジロジロ見んじゃねーや」
『…あの、沖田隊長私…絆創膏持ってますよ?』
「いらねェ、唾つけときゃ治らァ」
『でもバイ菌が入ったらいけないし…コレ、どうぞ!』
そう言って絆創膏を差し出すと沖田隊長は眉間に皺を寄せて渋々それを受け取った
『貼りましょうか?』
「ガキじゃあるめーし、自分でやらァ」
そっぽを向いて歩き出す沖田隊長の腕を掴んだ
『私…がやります!』
「だからいらねェっ…て」
言いながら振り向いた沖田隊長は私を見つめ目を見開いた
『私に…やらせて下さい』
仕方の無いことだったのかもしれないけれど、それでも…私が傍にいたら彼が怪我をすることはなかったのかもしれないと思うと…悔しくて仕方ない。
「…下手くそな貼り方したら切腹だぜィ」
そう言って意地悪く笑う沖田隊長を見つめ私も同じように笑い返した
『努力しますよ』
近くのベンチに腰を下ろし沖田隊長の頬に絆創膏をゆっくりと貼った
貼り付けた絆創膏にはたちまち血が滲み出ていた
こんな小さな傷でも…傷には変わりない。
もしこの傷が私を護る為に負ったものであったら…
「オイ…」
きっと私は…。
「オイ!!」
『はい?』
「はい?じゃねーだろィ。いつまで触ってやがんでェ」
『あ、すいませんっ』
どうやら無意識に絆創膏の上から傷を触ってしまっていたらしい
殴られることを覚悟していたが沖田隊長は不機嫌な顔をするだけだった
「オイ雌豚、」
『大石です…』
「お前…」
『…』
「…5ミリズレてるから切腹な」
『細かッ!!』