第9章 何気ない事で人の心は動かされる
「にしてもお前…意外と子供好きだったんだねィ」
『え?』
不意に沖田隊長が私の方を見て言った
「あの雨の日のガキといい、今回の御守りのガキといい」
言われてみれば確かに…。
『でも、それだけじゃないんです』
「?」
『あの子…あの御守りが大切だって言ってたんです』
大切なものを失う辛さを知ってるから、それが例え何であろうと取り戻してあげたいって思ったんだ。
『大切なものは人それぞれで、価値も様々だけど…その人が本当に見つけたいって思ってるモノはきっと見つかるって思うんですよ』
「…大切なモノは人それぞれ…か」
沖田隊長は私から視線を逸らし足元を見つめた
『はい!で、私の隊長に対する大切なモノはこれです』
そう言って携帯に付けたブタのストラップを見せると沖田隊長は目を見開いた
「な"ッてめ!何付けてんでィ、外しやがれ!!」
『ダメです!沖田隊長が私にくれたモノなんですからどこに付けようが私の勝手です!!』
「煩ェ!今すぐ外さねーとしょっぴく!」
『ぇえ!な、何でそんなに怒るんですか!?』
そう言った次の瞬間、沖田隊長に携帯を取られストラップを外されてしまった
『ああああ!?ちょ、何してくれてんですか!』
ポイッと携帯を返され、先々歩く沖田隊長が持つストラップを見つめた
『沖田隊長からのプレゼント…』
お気に入りだったのに。
沖田隊長は歩く足を止めて私に振り返った
「大石、」
沖田隊長がブタのストラップを私に投げたので慌ててキャッチする
『…えっ』
「それ、他の隊士達には見せんじゃねーぞ」
『あ…』
「それから…どうせ付けんならもっとマシなとこにしろィ」
マシなところ…。
『では鞘に付けますね』
「どの辺がマシなんでィそれ」
そう呆れたように言う沖田隊長、だけど再び歩き出そうと前を向く瞬間に見えた彼の耳はほんのり赤くて
胸の奥がギュッと締め付けられた
平河隊長…私、あなた以外にこんな気持ちになるなんて初めてです。
仲間意識とも、あなたへの感情とも少し違う
とても温かい気持ち。
「何してんでィ、早く来い」
初めての感情、これは一体何なのでしょうか
わからない。
けどきっと忘れちゃいけない気持ちだということだけはわかる
『…大事にします』
そう呟いて彼の背中を追いかけた