第5章 優しさにも色々な種類がある
「大石、」
しばらく死体を見つめていると去って行ったはずの沖田隊長が戻ってきた
『…?』
沖田隊長は私の肩を掴みいつもより少し真剣な顔つきで私を見つめた
「お前…奴等に何もされてねーよな?」
『…大丈夫ですよ』
そう言って笑うと沖田隊長は私の頬にそっと触れた
「血…出てんじゃねーか」
『これは返り血です…沖田隊長こそ血出てますよ』
そう言って沖田隊長の頬の血を指で拭うと"俺も返り血でィ"と言って手を払い除けられた
だけど拭った彼の頬からはまた血が滲み出ていた
『隊長…怒ってますか』
「…別に」
沖田隊長は素っ気ない態度で私から目を逸らした
『沖田隊っ…』
ズキッ
頭が……
『ぐっ…!』
痛い…ッ
「大石…?」
スゥーっと意識が遠退いてそのまま沖田隊長の胸に倒れ込んだ
「オイ!大石!!…結衣!!」
意識を失う最後に目に映ったのはいつものポーカーフェイスを崩して私の名前を必死に叫ぶ沖田隊長の姿だった
次に目を覚ますと見慣れた天井が視界いっぱいに広がった
ゆっくりと体を起こすと一瞬頭がクラっとした
「気分はどうでィ」
聞き慣れた声の方へ向くと沖田隊長がいつものアイマスクをつけて縁側に横になっていた
『…大分マシです…迷惑かけてすみませんでした』
「あぁ、テメェを運んだ時は腕の骨が折れるかと思ったぜィ」
『どんだけ重いんですか私は!ッ痛!』
「病人が騒ぐんじゃねーや」
『いや騒がせてるの隊長!!』
布団から出て沖田隊長の隣まで移動し縁側に腰掛けた
『私…どれくらい眠ってたんですかね』
「丸2日」
『2日も!?』
沖田隊長はムクッと起き上がり傍に置いていた団子を口に入れた
「お前が奴等に飲まされたのは恐らく睡眠薬でィ、大方黙らせる為に飲ませたんだろ」
『す、睡眠…』
「頭痛はしばらく続くみてぇだが命には関わらねぇらしい」
『そう…ですか』
やっぱり私が真選組の隊士だってことはあの時点でバレてたのか。
一人で納得していると沖田隊長に思いっきり両頬をつねられた
『イダダダッ何するんですか!!』
「何もされてねぇって嘘ついた罰でィ」
『そ、それはッ!…』
きっと…何て言っても言い分けしてるようにしか聞こえないだろうな…。