第5章 優しさにも色々な種類がある
「今回はまだ運が良かった…」
沖田隊長は私の頬から手を離し言った
「お前は俺の部下だ、2度と1人で何とかしようなんて考えるんじゃねェ」
そうか…きっと怒ってたんじゃなくて
- 大石が上玉ってどういうことですかィ -
- たまにはいいんじゃねェですかィ? -
あれは全部彼なりに私のこと心配してくれてたんだ…。
しばらく黙ったまま俯いていると沖田隊長が静かに言った
「あんま焦んな」
『!』
「……お前はお前のペースでバカやりながらゆっくり進んでいけばいいんでィ…」
『…』
「誰も置いてかねェよ」
早く認めてもらいたいばかりに1人突っ走って結果的に迷惑をかけてしまっていたのかもしれない…
『はい…』
「まぁ、わざわざんなこと言わねぇでも牛は元から遅ェから大丈夫だな」
『だから言われたことないですって』
一瞬で雰囲気ブチ壊したよこの人!
「それからこれ」
ひょいっと投げられたものを慌ててキャッチする
『?何ですか』
「2日遅れのハッピーバースデーってやつでさァ」
『え、まさかこれ…!』
「豚の顔で迷ってな…」
『ほんとに豚の置物!?』
いや…まぁ沖田隊長が物をくれること事態驚きなんだけど…。
恐る恐るその小さな箱を開けてみると、
『えっ…』
中に入っていたのはピンクの小さなブタのストラップ
- お前の好みなんか知るかってんでィ -
- 可愛い系のがいいですね -
うそ…もしかして
『沖田隊長…』
「こっち見んな」
沖田隊長は顔を逸らしてこっちを向こうとしない
だけど髪の隙間から見える耳はほんの少し赤くなっていた
「いい感じの豚の置物がなかったんでィ」
『っ…』
どうしよう…嬉しい…。
『ありがとうございます…だ、大事にします!』
沖田隊長は一瞬私を見て再び顔を逸らし団子を食べた
『沖っ…』
「総悟ォオオ!!」
私が口を開いたと同時に副長の怒鳴り声が屯所に響いた
「チッ…サボってんのバレちまった」
『いやバレちまったじゃないですよ!何堂々と仕事サボってんですか!』
「土方さんが来たら巡回行きましたって言っとけィ」
そう言って沖田隊長はどこかに行ってしまった
『ちょ、ダメですよ!またサボる気…』
でも…。
もう一度ブタのストラップを見つめ微笑んだ
今日だけは…いっか。