第5章 優しさにも色々な種類がある
- いいか結衣、やばいと思ったらすぐ逃げろ -
副長、ごめんなさい。
でもやっぱり私は逃げるなんて出来ない!
見てるだけなんてもう御免なんです!
次の瞬間、見張りの男の隙をついて刀を奪った
「ッ!てめえええ」
ザシュッッ
気を失いそうなくらい頭がクラクラする
「死ねェエエエ!!」
バシィッ
だけど、やらなきゃ!
私が護らなきゃ!!
そして認めてもらうんだ…
局長や副長や沖田隊長
一番隊や真選組のみんな
『うおりゃああ!!』
ザシュッッ!
平河隊長に。
『はぁ、はぁ』
辺りは血の海だった
両手は真っ赤に染まっていて、頭もクラクラする
女の人たちは怯えた表情で私をじっと見ていた
『真選組です…もう大丈夫ですよ』
「こ、怖いわ…」
『え?』
女の人たちの中の一人がそう言って私を指差した
「あなたも…怖い」
『!…』
「ご用改めである!真選組だァ!」
勢いよく扉を開け中に入ってきた沖田隊長は目の前に転がる死体を見て目を見開いた
「…」
それから誘拐されていた女の人たちは無事救助され、部屋には私と沖田隊長だけになった
「…」
『…』
沖田隊長は何も言わず、ただ黙って死体を見つめていた
- あなたも…怖い -
助けたつもりだった…
だけど結局私もこいつらと変わらなかったのかな…。
握っていた刀から手を離すとガチャッと音を立てて地面に落ちた
そんな私を見て沖田隊長は静かに口を開いた
「…これ、全部オメェがやったのか」
『…隊長、私…』
今思えばあの時は任務なんて関係なくて…
ただ生きることしか頭になかったのかもしれない。
「何が正しくて何が間違ってるなんて誰にもわからねぇよ」
『…』
「…だが例え自分がどんなことをしようと決して振り返っちゃいけねぇ…俺達は前だけみて生きなきゃならねーんでィ」
隊長の言葉に静かに頷いた
「それからこれ…」
そう言って沖田隊長が差し出したのは、いつも私が身に付けている星の砂だった
『これ!…どこで』
「山崎でィ…お前が忘れてったって。いつも肌身離さずつけてるだろ…」
『…はい』
強く頷いて沖田隊長からそれを受け取る
「土方さんには俺が説明しといてやらァ、お前は先に帰りなせェ」
そう言って沖田隊長は部屋を出て行った