第5章 優しさにも色々な種類がある
『夕暮れの~静かな町は~心細く♪』
「…」
『沈む太陽見つめる私~隣にいるのはっハーゲ~♪』
「降ろすぞ」
『間違えました!ツルツル頭~♪でした』
「お前もう歩け」
原田隊長が運転する車の中、暇だったので私は自作した歌を歌っていた
屯所を出てからもうかれこれ20分は経つが一向にそれらしい建物は見えてこない
『結構遠いんですね…』
「あと少しで着くさ」
私がこの発信機を押してから20分程してみんなが来るんだよね…大丈夫かな。
『原田隊長…私に出来ますかね』
「…さっきまで歌うたってたくせに急にどうした」
『いや…なんとなくです』
俯きぎみに微笑むと原田隊長はそっと私の頭を撫でた
「弱気になるな、俺も…局長も副長もみんな信用してっからよ」
『…はい!』
「着いたぜ」
車から降りて辺りを見渡すが怪しい建物は見当たらない
外観だけじゃわからないし、これは少しずつ調べていくしかなさそうだな。
『行ってきます』
「あぁ、屯所で待ってんぞ」
そう言って去って行く原田隊長を見送った後、建物の周りをゆっくりと歩き回った
それにしても薄暗い所だな。
治安も良さそうには見えないし、人も少ない…時間が遅いからかな。
その時、背後で人の気配を感じ立ち止まる
『…』
ごくっと唾を飲み込んでゆっくりと後ろを振り向く
しかし振り向いた先には誰もおらず気配も消えていた
『あれ…気のせい?』
急に気配が無くなるなんて…ひょっとして敵に勘付かれたのだろうか。
もしそうだとしたら敵が屯所に襲撃してくるかもしれない!!それだけは何としても防がないと!
副長に知らせようと携帯を取り出したその時、
「静かにしな」
しまった!
『ッ!むぐっ』
何者かに後ろから腕を掴まれ手で口を塞がれた
暗くて顔はよく見えないけどきっと例の婦女誘拐犯だ…
しかも一人だけじゃなく複数人いる
でもある意味これは作戦通り…大人しく誘拐されていたほうがいいのかもしれない
そう思っていたが奴等はペットボトルに入った妙な液体をこちらに向けた
『!』
「ちょっと静かにしてもらうぜお嬢さん」
必死に暴れるが複数人の男に抑えられていて身動きが取れない
そうして気づけば妙な液体を多量に飲まされていた
『うっ…』
意識が遠くなっていく…
これは非常にまずい展開だ