第5章 優しさにも色々な種類がある
それから山崎さんの所に行って着崩れした部分を直してもらいゆっくり話をしているとあっという間に時刻は夕方6時を回った
『や、やばいいッ!!』
「あ、待って結衣ちゃ…」
山崎さんの呼ぶ声も耳に入らず私は部屋を飛び出し、屯所の外へ向かった
「やっと来たか」
『す、すいません遅くなりました!』
「…お前、なんだそれ」
そう言った土方さんの目線を辿る
『何って刀ですけど…?』
「今回は置いていけ」
『えっ!』
「あたりめーだろ、刀持ってる女を誘拐するわけねェだろうが」
『そ、そうですけど…』
刀をじっと見つめていると土方さんが私の肩に手を乗せ言った
「結衣、心配すんな。俺たちが絶対に助けに行ってやる…」
『副長…』
「婦女誘拐の目撃情報が多い場所の周辺までは送ってやるよ…
原田が」
『チェンジで!!』
「大石てめーしばくぞ!!」
原田隊長に首根っこを掴まれ半ば強引に車に押し込められた
『え、ちょ、ちょっと待ってください!』
窓を開けて身を乗り出し副長に目を向ける
『どういうことですかこれ!?』
「俺が原田に頼んだんだ。…残念だが総悟は今巡回中だ、恐らくお前が向こうに着いた頃に帰ってくんだろ」
『いや別に沖田隊長じゃなくていいんです!残念だがって何ですか!!全然残念じゃありません、寧ろありがとうございます!』
「お前どんだけ総悟のこと嫌いなんだよ」
何かを哀れむような視線を送られたので思わず体を縮めた
大体沖田隊長とパトカーに乗るとろくなことはない
その証拠に一昨日彼と巡回した時にシートベルトをしていたのにも関わらず、沖田隊長が意味もなく踏んだ急ブレーキのおかげで私は顔面をガラスに強打した
その後の記憶はあまりない
「いいか結衣、やばいと思ったらすぐ逃げろ。
刀もねぇ、無理に戦おうとするな」
副長の言葉に静かに頷いた
「それから、その発信機を押せば俺達のところまで届く。押したら即座にその場から逃げるんだ!わかったか!」
『副長、わかってますよ!今だけは普通の女の子になります』
そう言って笑うと副長は"そうか"と言って煙草を噴かした
「行くぞ」
『はい!』
次に屯所に帰ってくる時は皆によくやったって、任せて良かったって認めてもらえたらいいなぁ。