第23章 災難は1度や2度じゃ終わらない【真選組女中編②】
「そっか…」
溜息をついてその場にしゃがみ込む銀さんにつられて私も腰を下ろす
「…。」
『…銀さん?』
俯いた髪の隙間から見える彼の表情はどこか寂しそうだった
『また…私が銀さんに何も言わなかったこと…怒ってる?』
「いや、怒ってねェよ。
ただ…またお前に何もしてやれなかったなって…そう思っただけだ」
あ…。
「やっぱ…近いようで…遠いよな」
小さく呟かれたその言葉が一体どんな意味を持つのか、この時の私にはまだそれがわからなかった
『銀さん…私ね、今までずっと誰かに護られて生きてきたから何も出来なくてもそれでいいんだって思ってたの』
「…」
『けど実際は違った。…逃げたり護られたりしてるだけじゃ…自分自身の大切なものは何一つ護れないって気づいたんだ』
もう、失うのも繰り返すのも御免だから、今度は自分自身の力で大切なものを護りたい。
『私にとっては銀さんも大切な人だから…傷ついたり危険な目に遭ったりして欲しくない』
「お前…」
私はそっと銀さんの手を取り、ぎゅっと強く握り締めた
『銀さんが私のこと想ってくれてるのはわかるよ…でも今は信じて欲しいの!いつか私が誰かを護れるくらい強くなる姿を…信じて…』
銀さんは一瞬目を見開くとクスッと笑って私の頭を掻き回した
「…やっぱわかってねェじゃねーか」
『え?』
「いや…けどわかったよ、お前の頑固さは」
『が、頑固って…』
「いつの間にか逞しくなっちまって…ほんと目が離せねェな」
腰を上げ、私を見下ろし微笑む銀さんを見つめる
『それって…褒めてるの?』
「いや、全然」
『え…。』
ガクッと肩を落とす私に銀さんは珍しく無邪気な少年のような顔で笑った
大切な人…か。
護りたいものは増えるのに…
私にはまだ…その力が足りない。
腰を上げ、その場に俯く私とその様子を見つめる銀さんに椅子に座ったままの桂が言った
「オイ銀時、ここに来てしばし経つが温かいお茶などはまだ出て来ないのか」
「うるせーよ、テメーは白湯でも飲んでろ」
「みっちー殿も早くこちらへ来い。まだ攘夷活動の説明が済んでいないぞ」
ドヤ顔で手招きする桂に溜息をつく私を銀さんは哀れみの表情で見てきた
『まぁ…真選組を辞めるつもりも攘夷志士になる気も私は全く無いけどね』
「…そうだな」
