第23章 災難は1度や2度じゃ終わらない【真選組女中編②】
「か、桂さん違いますよ!何回も言いますけどこの女は正真正銘あの1番隊大石結衣ですって」
「違くない!奴らのことに関してはお前達より俺の方が詳しいからな。俺くらいにもなるとこの女があの真選組女隊士かどうかなど目を見ればすぐにわかる。…間違いなく彼女は女隊士ではない」
「アンタの目は節穴かッ!」
浪士達の呆れ混じりのツッコミにも動じず、桂は腕を組み落ち着いた様子で私を見つめる
「しかしお前達の言うこともわかるぞ。この女の顔を見てると何やら初めて会った気がしないのだ」
『いや、思いっきり知り合いだから』
「まるで長い間追われ続けていたような気さえしてくる」
『いや実際に長い間追い続けて来たから』
次の瞬間、桂の目が大きく見開かれる
「もしや貴様は!!」
『……。』
「俺のファンか!」
散々貯めた後の彼の一言に私と浪士達は一斉にずっこけた
『はぁああ!?』
「いや、何も言うな。最近風の噂で俺の隠れファンがいるというのを度々耳にしている」
『いやそんな噂どこにも発生してないんですけど!誰がアンタのファンなんかになるか!!』
「そうか、まぁこんな状況では照れて本音も言いにくかろう。ここは場所をお洒落な喫茶店などにでも移し、そこでゆっくりとお互いに親睦を深めようではないか」
『行くかぁああ!!何さりげなく今後の人の予定を最悪なモンで埋めようとしてんの!!』
そんな私と桂のやり取りはその後しばらくの間続いたが、一向に進展しない話に浪士たちは半ば諦めた様子だった
くッ…桂め!なに人の顔簡単に忘れちゃってくれてんの!!
こっちは沖田隊長同様に今までアンタのこと散々追い掛け回して来たっていうのに!
私を確実に自分のファンだと思い込み高笑いする桂を内心苛立ちを覚えながら見つめていると浪士の1人が口を開いた
「あのー桂さん、そう言えばいつの間に戻ってこられたのですか。ほんの5分前に偵察に行かれたばかりでは…」
「うむ。だが幕府の犬に見つかってな…これ以上の偵察は危険と判断し今しがた戻ってきた次第だ」
「え!たった5分で見つかったの!?」
「ここも直に奴らが乗り込んで来るに違いない、皆急いで荷物を纏めるんだ」
「しかもまた付けられたのアンタ!?」
…なるほど、これだから桂達のアジトは毎回すぐ見つけられるのか。
