第22章 立場が変わって初めてわかることもある【真選組女中編①】
そういえば杏子ちゃん
- 結衣さんも気をつけて下さいね -
どうしてあんなこと言ったんだろう。
気をつけなきゃいけないのはこれから護衛任務に就く彼女の方なのに。
『ま、…いっか』
目の前の自販機のボタンを押し、落ちてきた煙草の箱を拾う
結局…沖田隊長とは今日もあまり話せなかったな…。
今朝から姿も見てないし、避けられてるのはわかるけど…何か虚しいというか…。
私はただ…以前のようにまた普通に話がしたいだけなのにな。
俯きその場に立ち竦む私の影は時間の経過と共に大きく伸びていく
『…。』
しかしその影は今度は見る見る小さくなっていった
『ッ!!』
同時に背後に嫌な気配を感じた私は瞬時に振り向くが、そこには少し日の傾いた街の景色が広がっているだけだった
『…気のせい?』
そういえば私…今刀持ってないんだ…。
人影もないし、下手に歩き回るのは危険かもしれない。
なんて…、隊服じゃないし私が真選組の人間だなんてわかるわけないか。
『それより早く戻らないと土方さんに怒られそう…』
早く戻って、沖田隊長達が任務に行ってしまう前に…ちゃんと謝ろう。
そして、ちゃんと自分の気持ちを伝えるんだ。
踵を返して屯所に帰ろうとしたその時
『ッ!?』
誰かがサッと物陰に隠れる瞬間を捉え、歩く足を止めた
何…幻覚?
「騒ぐな、」
違う!やっぱり幻覚なんかじゃないッ!これは…
「真選組1番隊、大石結衣だな」
しまったッ!つかまっ…。
『むグッ』
突然背後から1人の浪人に手で口を塞がれた