第22章 立場が変わって初めてわかることもある【真選組女中編①】
「大人しく我らについてきてもらおう」
どうする…刀が無いんじゃ手の出しようが…。
その時、私の腕を掴む男の腰に差さる刀が目に入った
一か八か…やるしかない!
男の腕を掴み、脇の下を抜けるとその刀を抜き取った
『動くな!それ以上近づくなら容赦なく叩っ斬る!』
男は両手を挙げ私を見つめる
だがその顔は怯えると言うよりは、ほくそ笑んでいるように見えた
『な、何が可笑しい!』
刀を再度強く握り男を睨みつけると、突然後頭部に鈍い痛みが走った
『ッな…』
視界が歪みその場に倒れると、背後にいたであろう別の男が鈍器のような物を持ち私を見下ろしていた
殴られた箇所から出た血が頬を伝い顎に流れる
ダメだ…意識が…
遠くなる。
そっか…
- 結衣さんも気をつけて下さいね -
あれはこういう事だったんだ…。
最悪だ…こんな所で死ぬんて…。
こんなことになるなら最初から煙草なんて買いに行かなかったのに。
刀だって…副長に怒られることを覚悟してでも持ってきたのに。
こんな事になるくらいなら沖田隊長にも…もっと早く謝りに行ったのに…。
もっと早く…気持ちを伝えたのに。
夕日をバックに映った複数人の浪人の姿を最後に瞼を閉じ、私はそのまま意識を手放した
ほんと私って…
バカだなぁ。