第22章 立場が変わって初めてわかることもある【真選組女中編①】
でも、せめて場所だけでもッ!
『あの局長、その任務って一体どこでっ…』
「っていかん!そんなこと言ってる間に時間だ!
結衣ちゃん、その残りの餡蜜も全部食っていいからな!」
『えっ、あ、はい…』
「それと、さっきからそこで覗いてる食いしん坊さんにも分けてやってくれ」
そう言った近藤さんが指差す先には、柱の後ろからこちらを覗き見る杏子ちゃんの姿があった
「きょ、局長!"覗いてる"なんて人聞き悪いですよ!私はただ…ちょっと甘そうな匂いがしたから…それで…」
言いながら高級餡蜜をガン見する杏子ちゃん
『杏子ちゃん、こっちに来て一緒に食べようよ!』
「い、いいんですか!?やったぁ〜!」
そう言って嬉しそうに駆け寄る杏子ちゃんを見つめ微笑んだ
「はぁ…っ…頬っぺが落ちそうです!」
『でしょ!?何本食べても飽きないんだよねっ』
目の前の高級餡蜜に対する感想でお互いに盛り上がっていると、ふと杏子ちゃんが食べる手を止め、私の方を向いた
「そういえば、先程は局長と何を話してらっしゃったんですか?」
『あ…うん。ちょっと相談に乗ってもらってたって感じかな』
「相談って……はっまさか!女中生活にうんざりして真選組を辞めるなんて言わないですよね!?」
『あ、いや…』
「そんなッどうしてですか!!仕事なんて慣れてくれば自ずと出来るようになるって教えてくれたのは結衣さんじゃないですか!」
『いやあの、だからね…』
「それとも何か他に真選組に居られない訳が…はっ、もしかして…
失恋ですか!?」
『はっ!?』
「わかります!気持ちは痛いほど良くわかります!でも1度や2度振られたくらいで諦めるなんて勿体無いです!それに…あの沖田さんが結衣さんを振るなんてきっと何か訳があるんですよ!だって沖田さんは結衣さんのこと…」
『ちょちょちょちょちょーっと待って!!』
このまま放っておくと彼女が永遠に喋り続けそうな勢いだった為、一旦制止して落ち着かせた
「どうしました?」
『いや、それはこっちの台詞なんだけど…何か勘違いしてるんじゃ…』
「え、でもっ…」
『わかった。じゃあ順を追って話してくれない?』
「わかりました。まずですね…結衣さんが沖田さんに失恋したって…」
『あ、まずそこからもう違うね』
