第22章 立場が変わって初めてわかることもある【真選組女中編①】
午前7時を回り、食堂にはぞろぞろと隊士達が集まって来た
『おはようございます皆さん!今日の朝食はカレーですよ!』
「ブクククッ、大石…!に…似合ってるぜその格好ッ!」
食堂に入って来た原田隊長は割烹着姿の私を見るなり堪え切れず、涙して笑った
『あの…熱々のカレーぶっかけますよ』
「おはよう結衣ちゃん。今朝は色々と大変だったね」
『あ、おはようございます山崎さん!今朝はカレーですよ!』
「えっ、それ結衣ちゃんが作ったの?」
目を丸くしてカレーを見つめる山崎さんに笑顔で頷いた
『見た目はともかく味には自信あるんで良かったら食べて下さい』
「つか朝からカレーってどうよ」
「あ、じゃあ俺貰おうかな…」
「やめとけザキ。腹壊すぜィ」
突然声のした方へ振り向くとそこには隊服姿の沖田隊長がいて、そのまま私の前を通り過ぎていく
『そ、そういうことは食べてから言ってくださいよ沖田隊長』
「それじゃ手遅れだろィ。それに食べなくてもその毒々しい色みりゃ誰だってわからァ」
『毒々しいってどの辺がですか?確かにルーが多少グロテスクな色に見えないこともないですけど、カレーなんてどれもドロドロでグロテスクじゃないですか!う〇こ色じゃないですか!』
「あの結衣ちゃん…たった今君のその発言で食欲がなくなったんだけど」
いつの間にか以前のように沖田隊長と会話出来ていたことに内心驚きつつ、それでもまだどこか冷たい接し方に私はこれ以上何かを言うことは出来なかった
「あれ、沖田隊長…朝飯食べないんですか?」
食堂から出て行く沖田隊長に山崎さんが声を掛けると沖田隊長は私のカレーを指差し言った
「こんなん食って腹壊すの俺ァ御免なんで見回りついでに外で食ってくらァ」
MU・KA・TU・KU!
沖田隊長が出て行った方を見つめ溜息をつく
『…そんなに駄目なのかな』
「…。結衣ちゃん、そのカレー俺に装ってくれない?」
そう言って山崎さんが空のお椀を差し出す
『え、でも…』
「大丈夫!匂いは良いしそれにほら、見た目がグロいものほど美味しいって言うじゃないか」
『山崎さん…』
お椀にカレーを装うと山崎さんはその場で1口食べた
『ど、どうですか?』
「うん、
やっぱり美味しうぼロロロロェ…」
『ええええ!!』
