第22章 立場が変わって初めてわかることもある【真選組女中編①】
『よいしょっ…と』
先輩に持たされたカゴを床に置き、一息つく
局長に副長に沖田隊長…か。
正直どの部屋にも行きたくない気がするけど、やらなかったら怒られるし…この際覚悟決めるしかないよね。
再びカゴを抱え溜息をつきながら、重い足取りで私はある人物の部屋を目指した
『まずはここから行きますか』
沖田隊長、今最も気まずい人物。
結局、私が任務を失敗したあの日から1度も会話しないで今日に至る
私が女中になったこともあってか、余計に話す機会がなくなった気もする。それに心做しか嫌がらせも少し減ったような……
ん?
『まぁ…それは良いことか』
とにかく、ただでさえ一緒にいる機会も少なくなったのにこのまま気まずい関係でいるのは良くない気がする。
そうだよ!寧ろこの機会をポジティブに捉えるんだ!
ちゃんと話して、謝って…この気まずい関係を終わらせよう!
そんなことを考えながら意を決して沖田隊長の部屋の前までやって来ると、そこには既に洗濯物らしきものが置かれていて思わず目を見開いた
『…え』
なにこれ…。
そこに置かれていたのは間違いなく沖田隊長の隊服で、さっさと持って行けと言わんばかりに部屋の外で綺麗に畳まれていた
つまりこれは…部屋には入ってくんなってこと?
ここに置いとくから持ってけ…みたいな?
え、私が来るのをわかってたってこと?
わかってたうえでのこれってことは…
そんなにも私とは顔を合わせたくないってこと!!?
顔に青筋を浮かべながら渋々目の前に置かれた隊服を手に取りカゴに入れた
そっか…ま、まぁそうだよね!
たった数週間やそこらで許してもらえるわけないもんね!
わかってた!
…本当に、だって私自身もまだあの時の自分が許せないもの。
そんな簡単に許されることだなんて最初から思ってない!
ズキッ
それなのに…避けられるのがこんなに苦しいなんて…。
- 行ってくるなっ、結衣 -
『…。』
何を焦ってるんだ私は…。
でもずっと心の中で何かがザワついている…
早くしないとまた、大切な何かを失ってしまうような
そんな気がするんだ。