第20章 甘い物の食べ過ぎには気をつけろ
あ、
危なかった!!
急に何言い出すんだ私ったら…!
まだ少し熱い頬を押さえながら屯所の門へ向かうと
「よォ、結衣」
私の名前を呼び、こちらに手を振る銀さんの姿があった
『ご、ごめんなさい。お待たせしちゃって…』
「いや俺も今着いたし…まぁ、お前にしては早く来た方だから許してやるよ」
『いつもは遅くてすみませんね!』
相変わらず銀さんは意地悪で死んだ魚のような目をしているけど、今日は何だか少し楽しそうだった
…パフェ食べ放題、よっぽど楽しみなんだなぁ。
そんな彼の後ろ姿を見つめていると、ふと私はある事に気づき歩く足を止めた
『あれ、そう言えば銀さん今日はバイクじゃないんだね』
大抵いつもどこかに行く時、銀さんはバイクに乗ってた気がしたけれど今日はそれらしき物はどこにも見当たらない
「あー…まぁ今日は天気も良いしな。たまには歩くのも悪かねェかと思って置いてきたんだよ」
『そうだったんだ』
確かに今日は雲一つない快晴だし、お散歩日和だな。
そんなことを考えながら空を見上げていると銀さんが私に振り向き言った
「てか…俺的にはお前のその格好の方が気になるんだけど」
『へ…?』
そう言って銀さんは眉間に皺を寄せ、私の服装を指差した
「だってお前の着てるソレ…普段オフの日に着てるやつだろ?出掛ける日くらいもっと良い着物着てもいいんじゃねーの?」
『え…』
もしかしてこの格好…遠巻きにダサいって言われてる!?
銀さんの言う通り、確かにオフの日に着ている袴ではあるけれど…。
『あの…でも私、着物とか持ってないし…この袴も色的にはそんなに悪くないと思うんだけど…』
「は?持ってねェって…大石家にいた時の着物はどうしたんだよ」
『そ、そんなの家を出る時に燃やしちゃったよ!』
「燃やしちゃったの!?」
まぁ…燃やすのはさすがにやり過ぎだったかもしれないけど。
『あれは私が財閥にいた時のモノだから…今はもう着る必要はないし着ようとも思わない…』
「…」
俯く私を見つめ銀さんは何か考える素振りを見せると突然私の腕を掴んだ
「じゃあ行くか」
『え?行くってどこに…』
「決まってんだろ。新しい着物、買いに行くんだよ」
『えっ!』
銀さんに腕を引かれるがまま、私達は甘味屋とは反対方向に向かって歩き出した