第16章 たまには素直になるのも大事【帰省編③】
『…な、なんで…』
「そう…。結衣は本当にあなたの事を慕っていたみたいだから…一度お会いしてみたいと思っていたの」
そう言って嬉しそうに笑う母上
「…そうなんですかィ」
もしかして沖田隊長…
- あいつが大切にしてたもん…代わりに今度は俺が護ってやるっつってんでィ -
あの約束の為に?
「ねぇ平河さん…1つ約束してくれないかしら」
「何ですかィ?」
「この先、あの子にはきっと色々辛い事が待っていると思うの…財閥の娘だということもあって…結婚もその1つよ」
『…』
「でも私はあの子には幸せになって欲しいの。…家柄なんて関係ない、自分の決めた道を歩んでいって欲しい」
「…」
「だから…その時が来るまであの子のことを護ってあげてくれないかしら」
母上…。
「…実は俺も…ある男と約束したことがあるんです。その男は自分の大事なモンを代わりに護ってくれって俺に頼んで来た…。俺も初めはそいつの望みを叶えてやる為に義務としてその宝を護ってた。
…けどいつからか、義務なんかじゃなく…俺自身がそれを護りたいと思うようになっていたんです」
『…』
「それはきっと…あなたにとっても大切なものになってしまったから、なのね」
母上の言葉に数秒黙った後、沖田隊長は小さな声で"そうかもしれない"と言った
「だから、心配しなくても…俺は最初からそのつもりですよ」
「…ありがとう」
あぁ、どうしようか。
襖越しの彼の声が愛おしくて
『ッう…ヒッグ…』
酷く切なく感じる。