第16章 たまには素直になるのも大事【帰省編③】
しばらくして部屋から出て来た沖田隊長と目が合うと彼は目を丸くして私を見つめた
「は?…ちょっと待てオイお前…いつからそこにいたんでィ」
『…さっきです』
「さっき?…つーか親父との話はどうなった…って何泣いてんでィ」
沖田隊長の顔を見るとまた自然と涙が溢れ出した
『ッ、沖田隊長…のバカ』
「オイ、いきなり泣き出してバカ呼ばわりかィ」
『本当に…バカ、ドS野郎、クソサディスト、能無し!!』
「マジで斬られてェのかてめーは」
『…とう』
「!」
『あり…がとうございます』
俯く私に沖田隊長は溜息をつき顔を背けた
「…聞いてたのか、全部」
『…はい』
「まぁ安心しろィ、お前の悪口も同じくらい吹き込んどいてやったから」
『安心出来ません、すぐに訂正して来て下さい』
泣きながら怒る私を見つめ沖田隊長は微笑む
『どうして…自分は平河だって嘘ついたんですか』
「…」
『確かに母上は平河隊長とは一度も会ったことはなかったですけど…もう…』
会うことなんて…二度と出来ないのに。
「俺が誰かなんてどうでもいいんでィ」
『えっ』
「俺ァただお前のことをあの母親にちゃんと聞かせたかった」
『…』
「好きな物、嫌いな物、バカなこと、何でもいい。…ただ今の大石結衣を教えてやりたかっただけでィ」
沖田隊長…。