第16章 たまには素直になるのも大事【帰省編③】
父上の部屋から出ると隣の壁にもたれ掛かるようにして立っていた人物と目が合う
「随分と威勢が良くなりましたね、結衣様」
『…琉生』
「この間…といっても3年前でしたか。あの頃のあなたは何処からどうみてもただのか弱いお嬢様でしたが、今のあなたなら護り甲斐がありそうです…以前よりね」
『…あなたは父上に仕えているだけでしょう、私を護る必要なんてないわ。勿論、護られる必要もない』
そう言って琉生を睨むと彼は薄く微笑んだ
「私には随分と冷たいんですね。
あなたのご友人を傷付けたことをまだ怒ってらっしゃるのか、それとも…」
言いながら近づくと彼は私の手首を掴み勢いよく引き寄せた
『ッ』
「私があなたの婚約者ということがご不満ですか?」
『…』
琉生は強い…それは昔から知っていた。
いつも私や父上の傍にいて
大石家の専属護衛として私達家族を護ってくれていた。
だけど、そんな彼も唯一逆らえない父上の暴走までは止めることが出来なかった。
琉生はただ剣を握り、振り回すことでしか人を護ることが出来ない…。
だからこんなやり方でしか…自らの思いも表現出来ないんだ。
『琉生…私はあなたと結婚する気はないわ』
「…」
『私は…私の想いは全て父上に伝えたし、父上の考えがどうであろうと真選組を離れる気はない!だからあなたもッ…』
言いかけた次の瞬間、彼により手で口を塞がれた
『!』
「…それ以上は言う必要はない…」
『えっ…』
「私にはまだやるべき事が残っている…その為にもここにいる必要があるんです」
『やるべき事って…?』
琉生はそれ以上は何も言わなかった
『…琉生ッ…』
「結衣お嬢様!!」
声のした方に振り向くと私を見つけたお菊さんが私を見るなり血相を変えて駆け寄って来た
「その頬…一体どうされたのですか!?まさか旦那様に…」
慌てる彼女を横目に再び琉生の方を向くと、彼はもう既にそこにはいなかった
『…』
「…結衣様?」
『あ、大丈夫です…擦り傷ですから!それに…
これくらいは…薄々わかっていたので』
「…結衣…様」
『それより、沖田隊長は?』
私の言葉にお菊さんは少し困ったような顔をした
「それが…」
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『…え』