第16章 たまには素直になるのも大事【帰省編③】
『…』
カチャッと音を立てて私の手から落ちた小刀、それと同時に束ねていた私の髪が床に落ちた
「結衣…お、お前…」
『父上、確かに父上の言う通り私は女で力も無いし弱い』
だから私は護ることが出来なかった…。
あの日、大切な人を…目の前で失ってしまった。
『でもだからって…何もしないわけにはいかないんです!』
もう誰も傷ついて欲しくない。
『父上、私はもう護られるだけは嫌なんです、ただ見ているだけなんて耐えられない!非力でもいい、私は今度こそ私の大切な人を護りたいんです』
「…結衣、今自分が何を言ってるのかわかっているのか!」
『…』
「ッ!」
バチンッ
俯いたまま静かに頷くと、父上は私の頬を勢い良く叩いた
「お前という奴は…ッ、今まで私がお前を護る為にどれだけ力を尽くしたと思っている!?その恩を仇で返すつもりか!」
『…』
「今度こそ護るだと?寝惚けたことを言うな!下賤の者達に影響され命を安売りしよって…それも平河という男の教えか?」
『…平河隊長は関係ありません』
「では真選組という芋侍どもの影響か…どちらにせよろくなものではない」
『ッ!』
「やはりあいつらといることを許した私の間違いであったか。もうよい、部屋に戻りなさい。
今後、お前が結婚するまで自ら外へ出ることは一切禁止とする。それから真選組は…そうだな、お前の婚約者に潰してもらうとするか」
『…父上…』
「…なんだ?」
『やはり…父上は変わっていませんね』
「…変わっていない?…当たり前だ。今も昔も正しいのはこの私なのだからな」
そう言って高らかに笑う父上を私は見つめた
『…まだわからないんですか。私がこうして自分の髪を切った理由も自らここへ来た理由も…』
「…なに?」
『真選組を潰したければお好きなようにして下さい。…但し、』
次の瞬間、私は父上の背後に回り小刀を彼の首に突きつけた
『私の大切な人達に指一本でも触れれば、私がこの手であなたを殺します』
「な"ッ!」
『私が出来ないとでも?…勘違いしないで下さい。
私はもう財閥の娘でも護られるだけのか弱い少女でもない』
『真選組一番隊隊士、大石結衣』
一人の人間であり、
「!!」
『これが私のケジメです』
侍なんだ。