第2章 昔話は簡潔に
沖田隊長は何も言わず黙ったままだったので私は静かに口を開いた
『…あの事件から毎日夢にあの人が出てくるんです』
「…平河か…」
沖田隊長の言葉に静かに頷いた
『彼が死んでもう2年も経つのに…まだ私にはそれがつい昨日のことのように思えて…』
「…」
『局長も副長も誰のせいでもない、気にするなって言うけど…それでもあの時私が彼を止めていればって、いつも思うんです』
そう言って手を強く握り締めた
平河隊長は私に出来た初めての上司だった
いつも笑顔で気さくな人間だった
特別部隊隊長の彼は多くの隊士達に慕われていて私もその中の一人だった
彼は私が落ち込んでる時や何かで悩んでいる時、いつも隣で慰めてくれた
『平河隊長…私は強くなれないんですか?』
「どうしてそんなことを?」
『私は女だから、両親にも反対された。…他の隊士のみんなにも本気で相手にされてない気がするんです』
「…それは関係ないさ」
『でもッ…』
「他の奴は知らねェが、俺はお前に手加減なんて一度もした覚えはないよ」
『えっ…?』
「結衣、よく覚えとけ。確かにお前は女だ…けどだからって強くなれないわけじゃない。今はその刀を握ることも難しいかもしれない、他の隊士に比べ弱いかもしれない、でも俺はお前の頑張ってる姿を知ってる。
だから俺は自信を持って言える、いつかお前は立派な隊士になるってな!」
『平河隊長…』
「そしたらそうだな…お前が一人前の隊士になったら俺の隊に入れてやろう!」
『ほ、本当に!?』
「ああ!」
"だから頑張れ"
『…約束したくせに…』
握っていた手の甲にポタッと涙が落ちた
『すみませッ…ん』
「…」
沖田隊長は何も言わなかった
ただ握り締められた私の手を無表情で見つめていた