第13章 嫌な予感ほどよくあたる
しかし、その日平河隊長は夜遅くになっても屯所には戻らなかった
心配になって平河隊長の隊の人達に何かあったのかと聞いてみたが彼らはみんな口を揃えて「心配ない」と言うだけだった
大丈夫だよね…。
だって平河隊長言ってたもん…明日私と手合わせしてくれるって…
ちゃんと帰ってくるよ…。
その時私はそう何度も自分に言い聞かせ自室に戻った
そして、その日の夜中、
屯所の門の前に人の気配を感じ部屋を出ると、そこには息を切らしながら門にもたれかかる平河隊長の姿があった
『平河隊ちょ…』
「結衣…」
慌てて彼の傍まで駆け寄ると、その身体の至る所が切り傷だらけだった
『な、何があったんですか!まさか攘夷浪士にやられ…』
言い終える前に平河隊長によって手で口を塞がれた
「しっ…大丈夫だ。少し調べることがあってな…結衣が心配してるだろうと思って1度戻ったが…またすぐ行くよ」
『調べることって、一体なにを…』
「朝には戻る、心配するな」
『私も行きます!』
「駄目だ!」
『ッ!』
「これは俺の仕事だ…必ず成し遂げるって誓ったんだ」
平河隊長は私に背中を向けゆっくりと歩き出す
『待って…平河隊長!』
「結衣、」
立ち止まった彼は振り返るとそのまま私に向かって小さな瓶を投げた
慌ててそれをキャッチするとそれは以前平河隊長が私にくれたものと同じ、星の砂が入った瓶だった
『これは…』
「俺のだよ…持っててくれ」
そう
私はこの時、なんとなく気づいていた
彼が私に自分の星の砂を渡した理由も
「必ず戻ってくるよ…だから…行ってくるなっ結衣」
そう言った彼が最後に微笑んでいたわけも…。