第13章 嫌な予感ほどよくあたる
俯き黙り込む私にさらに追い討ちをかけるように父上は懐から封筒を取り出し私の前に差し出した
『…これ…は?』
「診断書だ」
『!?』
「今朝方医者に診てもらったのだが…」
次の瞬間、私は勢いよく立ち上がり父上の着物の袖を掴んだ
『ま、まさか母上に何か…ッ』
「…落ち着け、ただの診断結果だ」
『…』
私は恐る恐るその封筒の中から一枚の紙を取り出した
「…だが…良い結果とは言えん」
父上の言葉と同時に目に映ったその文字に私は言葉を失った
"結核"
「普段は落ち着いているが、ふとした時に酷く咳込むことがあってな…
医者には"もう長くない"…と言われた」
『ッ!』
湯呑みに口をつけながら父上は静かに私を見つめる
「私は母上を救えるのならいくら金を出しても構わない…。だが病だけは金がいくらあろうとどうにも出来ないこともあるんだ」
『…』
「母上が言っていたよ…"結衣にもう一度会いたい"と。…
私の為だけではない、お前の母上の為にもお前は帰るべきじゃないのか?」
父上の言葉に私は何も返すことが出来なかった
ただ、一度に色んなことがありすぎて頭の中が上手く整理出来ない
私は…平河隊長と約束した。
その約束があったから私はここまでやって来られた
今もう一度あそこに戻ってしまったら私はどうなるのだろう。
「結衣、お前は所詮女だ。どれだけ強くなったところで彼らとお前にはどうしても超えることの出来ない壁がある。お前は女らしく、財閥の娘らしく…早いとこ結婚をして私の後継を産むんだ」
"その方が母上も喜ぶであろう"
私は…
− 必ず護り抜くんだ −
私はッ…
『父上、私は…!』
「また犠牲を出すつもりか」
『ッ!』
そう言った父上の鋭い視線が私を捉える