第11章 人の話は最後まで聞くべし【沖田視点】
大石が戻ってくる前に厠に向かった俺はそこで妙な連中とすれ違った
この廃刀令のご時世に刀を腰からぶら下げ小走りで何かを探す数人の男
役人か…?
そっと後をつけようと思ったが大石の存在を思い出し、一旦あいつの所に戻ることにした
来た道を戻ろうと足を進めようとした時、前方から大石がこちらへ走って来るのが見えた
別にんなに走らねーでも置いて行きゃしねェのに。
「おー…悪ィな。ちと厠に…」
言い終える前に大石が勢いよく俺の胸に飛び込んできた
一瞬のことで動揺を隠しきれなかった俺だったが、程なくして大石の体が小刻みに震えていることに気がついた
"た…助けて "
微かに聞こえたその言葉の意味を俺は一瞬で理解することが出来なかった
「何言って…」
しかし次の瞬間、数人の男達が俺と大石の周りを囲んだ
!こいつら…さっきの奴らか…。
「彼女をこちらへ渡してください」
そう言って複数人の中から一歩前に出てきた男を睨む
この気品な物言いといい、風貌といい攘夷浪士じゃねェことだけはわかる。
だが何の為に大石を…。
「その方をこちらに渡して頂だけますか」
「うちの隊士が何かご迷惑おかけしましたかィ」
「うちの隊士?…あぁ、なるほど何処かで見たかと思えば、真選組一番隊隊長沖田総悟さんですか」
目の前の男は不敵に笑い大石と俺を交互に見つめた
「迷惑なんてとんでもない。私たちはただ彼女に少しお話があるだけですよ」
「話?」
目線を大石に向けると大石は目を大きく見開き男を見つめた
「結衣様…もう時間切れですよ。貴女はもうそこにはいられない、わかっていますよね?」
「お前…こいつらのこと知ってんのかィ?」
俺の言葉に大石は黙って俯く
「とにかく、大人しくその方をこちらにお渡し頂ければ誰にも危害は加えません」
「…」
俺は自身の刀に手を掛け大石の前に立った
『沖田隊長…?』
「生憎、こちとら田舎育ちの芋侍なもんでねィ…理由も無しにはい、そうですかつって引き下がる程聞き分けが良くないんでィ」
「…そうですか、出来るだけ手荒な真似はしたくなかったのですが…残念です」
次の瞬間、俺は勢いよく刀を振りかざした