第11章 人の話は最後まで聞くべし【沖田視点】
「美味しいって言ってもらえて良かったわ」
俺と大石の座るテーブルまで来たお雪さんは嬉しそうに話す
『はい、あの…とても美味しいです!』
お雪さんは俺との先程までの会話でからか、単に女同士で気が合うからか、大石に少し興味があるようだった
それでも黙って聞いていることが出来なかったのは、
真選組に入る経緯を聞かれた大石があまりにも辛そうで、言いにくそうに顔を歪めていたからだ
「そろそろ勘定いいですかィ?」
俺はお雪さんに代金を支払うと大石の腕を掴み、店を後にした
それから二人して屯所への道を歩いていると大石はそっと口を開いた
『あの…沖田隊長』
「あ?」
『あの店員さんと知り合いだったんですか?』
「あぁ…まあな」
俺は歩く足を止めることなく話した
「…夏目 雪、彼女は以前起きた事件の被害者だった人でさァ」
『以前起きた…事件?』
それから4年前の令嬢誘拐事件について話すと、どうやらこいつも知っていたようで事件について詳しく調べたこともあるみてェだった
『!じゃああの人は…夏目財閥の令嬢!?』
大石の言葉に頷くと彼女は黙って俯いた
「…まだ気になることがあんのかィ?」
『いえ、何でもありません』
そう言って微笑む大石を横目に俺は懐に入れていた携帯を開いた
「あと30分くらいあるな…屯所ももうすぐそこだし、お前…喉渇いてねェかィ?」
『えっ、あぁ…少し』
「んじゃここで待っててやるから好きなの買ってきなせェ」
『沖田隊長…』
「当然だろィ
俺の分もお前の金なんだから」
『ですよね!!』
大石は顔に怒りマークを浮かべながら渋々飲み物を買いに行く、そんな後ろ姿を見つめ俺は溜息をついた