第10章 壊れた壊した壊された ー神崎颯馬ー
「颯馬、くん」
稽古の休憩時間中、姉ちゃんがイソイソと神崎サンの隣に座った。
「どうされた?あんず殿」
「一緒に食べたいらしいっす」
俺が軽く補足する。因みに俺はマッシーと食べる。
「お前、よく見てたな今の…ていうか、ずっとあんずさんの側にいるよな。」
「……………うーん、そうか?」
俺は何か思い出しそうになったけど頭を軽く振ってリセットした。重たい話しは好きじゃない。
「もしかして、シスコン?」
「姉ちゃんがブラコンなんだよ。」
「え、マジ?」
何て話している間にマッシー越しに姉ちゃん達を見る。神崎サンは姉ちゃんの途切れ途切れの単語に苦戦しているようだったが、熱心に話を聞いていた。
「変わってるよなー、あんずさん。いつから無口なんだ?」
「…んー、さぁ。」
思い出さないように、考えないように。
俺の頭は少しゴチャゴチャした。
神崎サンはやっと理解したのか綺麗に笑っていた。姉ちゃんはホッとしたようにほほえんでいた。
ふと、姉ちゃんがこちらを見てヒラヒラと手を振ってきた。言葉がない分、こういうのはよくやってくる。
俺は目をそらしながら軽く手を振った。
「…やっぱりブラコンなのか」
「まだ引きずってたのマッシー」
俺はクククと笑った。アイドル科は毎日がゲームみたいでわりと嫌いじゃない。そこだけは姉ちゃんにありがとうだ。
ふと姉ちゃんが立ち上がる。神崎サンも立とうとしたが、姉ちゃんが黙って止めた。
「あれ、どこいくんだ?」
「…マッシー、あんま女の人にそういうの聞かない方が良いと思うよ。お手洗いだったらどうすんの。」
「あ、そっか!」
「いや、あの様子だと多分売店か自動販売機。今日水筒忘れたって言ってたから何か買うんだと思う。」
喋っていたら弁当はいつの間にかなくなり、マッシーは演劇部として日々樹サンに氷鷹サンと一緒に呼ばれたので、俺は神崎サンの所に行くことにした。
さすがに、あの三年生の中には入りたくない。南雲とやらはよくあそこにいられるものだ。