第9章 うん、ごめん ー衣更真緒ー
暗い、夜。真っ暗な夜。
凛月くんは可愛い寝顔で眠っている。私は慣れない環境で中々眠れなかった。
その時、ドアの方からトントン、とノック音がした。私はぎょっとして寝ている凛月くんにしがみついた。
「あんず」
聞き慣れた声だった。
「…いるんだろ?」
私は、答えない。布団をかぶって聞こえないふりをする。
凛月くん起きてしまったのか、モゾモゾとベッドを動き回って、私の体をよじ登ってきた。
「………悪かった、ごめん」
衣更くんの弱々しい声が聞こえた。
「…でも俺、放っとけなくて…お前に何かあったらって思ったら、放っとけなかったんだよ。」
「………ごめんは、私もだよ。」
私は聞こえないように言ったつもりが、衣更くんにはバッチリ聞こえていたらしい。
「いや、俺は……」
その時、私の体は全く動かなくなった。何か重い物が私の上に乗ったようで…全く。
え?と何が乗っているのか確かめる。フード付きの赤ちゃん用つなぎ服を着たまま、大きくなっている……というか、元に戻っている凛月くん。
私の顔の両側に手を置いていて、四つんばいになって私を見下ろしていた。
「ん~………あんず?何、夢…?」
「き……」
「き?」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
突然のことに、私は叫んだ。
その時、ドンッ!と大きな音がして、誰かが慌ただしく中へ入ってきた。
「あんず……って凛月!?な、何やってんだお前!!てか何だその服!!」
「あれぇ、まーくん?ねぇ、あんずが変なんだけど」
「あ、あうあうあう…」
刺激が強すぎたようで、私はショート寸前だった。
「こ、これはいったい……」
衣更くんの後ろからひょっこり現れたのは零さんだった。
「二日間ではなかったのか…?たったの一日で…。」
「誰か説明してくれ…。取りあえず、凛月はあんずから離れる!!!」
凛月くんは気だるそうにベッドから降りた。