第9章 うん、ごめん ー衣更真緒ー
「あー、一粒使ったかも瓶に入った角砂糖。」
「…こんなことってあんのかよ……」
ベッドの上に座った衣更くんは驚き呆れていた。私は衣更くんの隣に座って凛月くんの様子をマジマジと眺める。うん、普通だ。普通の凛月くんに戻ってくれた。
「俺も目が覚めたら体が言うこときかないし、困っちゃったよ。」
「取りあえず、帰るとするかのう。凛月や、共に帰ろうぞ」
「はあ、何あんた!ていうか、俺の制服はっ!?」
凛月くんは慌ただしく外へ出て行ってしまった。零さんは去り際に衣更くんに目配せをした。私は?と首を傾げた。
「……何だ、まぁ大変だったな。」
「う、うん。」
私はあくびをこぼした。吸血鬼である彼らは関係ないであろうが、私にはおねむな時間だ。
衣更くんが ん、とあぐらしている自分の足をポンポンと叩いている。
「何…」
「眠いんだろ?」
膝枕、ということらしい。いやいやいや、それはない。
「いい、普通に寝る。ていうか衣更くん帰らないの?」
「お前一人にできねぇよ…」
苦笑してくる。そういうところがむかっとくる。衣更くんは私の機嫌の変わりように気付いたのか、ハッとしていた。
「わ、悪い…」
「いぃ…」
衣更くんの足を素直に枕にさせてもらった。
「今日は、スペシャル素直なあんずちゃんデーだからね。」
「っはは、なんだそれ。」
「うん、ごめん。」
私は少し笑うと、すぐに眠りについた。衣更くん、夢でも会えると良いね…
夢の中では、真緒くんって呼ぶからさ。