第9章 うん、ごめん ー衣更真緒ー
「零さん!凛月くんが大変なんですっ!今すぐ来てくださ…「凛月ぅぅぅぅぅっ!!!」はやっ!?」
今は授業中だからと留守電で零さんに電話をかけていたらその途中で零さんはやって来た
「あの!こんなことになっててっ!」
私が焦りながら零さんに説明する。説明し終わると零さんは頭を抱えた。
「何ということじゃ…嬢ちゃん、これはのう…この学院に伝わる伝説の一つじゃ。何年かに一度、赤ん坊へと若返る生徒が現れると…」
「えぇっ!?戻るんですか!?」
「安心せい。吾輩が1年のとき、こうなってしまった者がおったが一週間ほどで元に戻り、吾輩より先に卒業していきよったわい。」
「なら…良いんですけど。お洋服とかどうしますか…というかどうしましょう…」
「確かにこれは家族には言えんのう。家族の方は吾輩が何とかしよう。じゃが…面倒を見たいのは山々じゃが…」
零さんが凛月くんに手をさしだすと凛月くんはその手に噛みついた。
「この通り、記憶は残ったままなのじゃよ。」
零さんは本当に、本当に悲しそうに笑った。
その時、私は咄嗟に言ってしまった。
「私が面倒見ます!家には弟もいるし、大丈夫です!」
「しかし、両親にはなんと…」
「何とかします!ていうか、私が一週間学院に寝泊まりして…うん!そうします!」
私が満面の笑みでそう言うと、零さんは安心したように笑った。
さて、そうして始まった子守生活。夏休みも終盤、仕事はこの時期少ない。
零さんの計らいで取りあえずKnightsの皆に事情を説明し、Knightsのみんなが合宿するという名目上子守生活は本格的に始まった
服を買い揃え、オムツも買った。突如高校生が赤ちゃん用売り場に出現し、変な目で見られたが。
「すー、す~」
「はいっ!朱桜です凛月先輩っ!」
「ね、ねぇ…」
「お姉ちゃん!ほら言ってごらん、お姉ちゃん!!」
皆、ほぼほぼ遊んでいる。でもまあそんなものだろう。レオ先輩はご機嫌に作曲を私に教えてくれる。
「駄目だ駄目だ!もっと感じろ!考えるな!世界一の妄想者になれっ!!」
「む、難しい!!」
「あー、あー!」
凛月くんが必死に私の元へと匍匐前進してくる。
「あんじゅ、あんじゅ-!」
「どうしたの?」
「まんま、まんま!」
どうやらお腹がすいたらしい。