第8章 両片想いが喧嘩した結末は ー朔間零ー
朝のSHRを告げるチャイムがなる。私はその瞬間力尽きてその場に崩れ落ちそうになるも、窓枠をつかんでこらえる。しかし、長くは続かずすぐにその場にへたり込んだ。
最悪だ、逃げてきてしまった。
私は朝の誰もいない廊下で顔を覆って泣いた。
新しいお守りさんも効果はなかったのかな。ううん、お守りさんはちゃんと何回も私にチャンスをくれてる。
私が逃げてるだけだ。
「あんずちゃん」
そっと優しい声がして頭を優しく撫でられる。
「……英、智…先輩?」
「これ、使って」
差し出されたハンカチにどうしようかと戸惑っていると英智先輩が私の涙をふいてくれた。
「先輩…何で、ここに」
「今日は体調が悪くてね。だから遅刻をしてしまったんだよ。」
やれやれ、と言う先輩の顔色はなるほど、確かに悪い。
「ところで、どうして君は泣いているんだい?」
「………私、零さんに冗談交じりとはいえひどいこと言ってしまったんです。お守りさんは私に謝るチャンスをくれてるのに、私逃げてきてしまって…何だか情けなくて…」
先輩はお守りさんというところで軽く首をひねったがだいたいは理解したようだった。
「彼の様子がおかしいのはそういうことだったんだね。」
先輩が私の前にしゃがんで私と目を合わせる。
「あんずちゃん」
そして先輩は満面の笑みでこう言った
「僕なんかどうだい?」
「え?」
意味が分からなくて間抜けな声が出る。嫌、意味が分かったから間抜けな声が出たのか。
「え……っと…私は………好きな人が、いるから…」
「知っているよ。でも、一応伝えておきたかったんだ。」
「知ってるって…」
「彼より、僕を選んでみてほしいな。」
その言葉を聞いて、私はゆっくりと答えた。
「私、は…………零さんが好きだから…………」
それだけだ。断る理由はそれだけだった。
「ごめんなさい。」
先輩はフフフ、と笑った。
「だ、そうだよ。良かったね。」
と誰かに語りかけ、そのままどこかへ言ってしまった。