第8章 両片想いが喧嘩した結末は ー朔間零ー
「でなぁ、その時にバァーッとな!!」
「うん!うん!」
普段は死んだ目をしてテレビゲームをピコピコやっている弟が生きた目をして影片くんの話しを夢中で聞いていた。意気投合したようだ。
「うわぁ、宗お兄ちゃんすごい!」
「マドモアゼルの新しい服の完成だ…僕にかかれば朝飯前なのだよ。」
フフフと怪しげに笑い上機嫌な宗お兄ちゃん。
「マドお姉ちゃん、今日はいないのね?」
「あぁ、学院に置いてきたのだよ。明日は雨が降るようだからね。濡れたら大変だ」
リビングでわちゃわちゃとしゃべっていると、キッチンから母が私達を呼ぶ声が聞こえた。
晩御飯だっ!
「………本当に雨だ」
「雨ぇ……」
「雨や…」
「だから昨日言っただろう」
朝一から皆ナイーブ。弟なんか死んだ目を半開きにして白目をむいていた。
「ほら、遅刻するからはやく食べちゃいなさい。」
「「「はーい…」」」
お母さんの注意に宗お兄ちゃん以外皆気だるげに答えた。
「行ってきまーす、ほんまおおきに!」
「世話になったのだよ」
「はーい、また来てね」
「行って来まーす…ねむ…」
「行って来まーす」
それぞれお母さんに挨拶をすませ、玄関の扉を開ける。弟が逆方向に歩き出すと、いよいよ私達三人になった。
学院につくと、何やら晃牙くんがやかましくわめいていた。
「あんずーーっ!あんずのヤローはいねーのかーっ!?」
校門前で片手にマイク、片手でめちゃくちゃにギターをかき鳴らす晃牙くんの姿が。
そんな彼を見ようと大勢のギャラリーが押し寄せていた。
あまりにたくさんの人を前にして影片くんと宗お兄ちゃんが怯んだ。
「えぇっ…!?私の名前、呼んでない…!?」
「うるさい犬だ…」
「いや、いややぁっ!!人たくさんいていややぁっ!」
影片くんが私の影に隠れようとする。いや隠れないよっ!?無理だよ!?
待って、そんなことしたら、私…!
「見つけたぞーーっ!あんずぅぅぅーーっ!!」
「ほら見つかったしぃぃぃーーーっ!?」