第2章 夢の話し 遊木真
「ねぇ好海」
急に低くなった声にドキッとしてしまう。
「いい加減諦めなよ」
何を、と聞く前にグラッと体制が変わった。
か、壁ドン………だと……!?
目の前に朔間くんの怪しげな笑顔。何となくまずい、逃げなきゃと本能が言っているのだが動けなかった。
「ね?」
「ね?じゃないね?じゃない!訳わかんない!顔近いしっ!」
私の訴えも空しく朔間くんは更にグイッと顔を近づけてきた。
朔間くんの整った顔に不覚にもときめいてしまう。
「あ、今ときめいた?」
「違う!ときめいてないから!」
グイグイ押すが流石は男の子。ビクともしない。
「好海からボディタッチとは積極的だね」
「ち、が、うー!さっきから話しかみ合ってないし!セクハラ反対!!チョ~嫌だ!」
流石に限界がきた。私は朔間くんの腕を潜り抜けて脱出。扉まであともう少しというところで手をつかまれ再びホールド。今度は後ろではなく真正面から。
「なっ…!」
「抱きしめてるのがあんたの彼氏だったらあんたも大喜びかな…?ていうか、こんなとこ見られたら大変だね~。ま、パーティーの準備でそれどころじゃないと思うけど。」
「分かってるならやめてよ…!」
「ヤダ。好海って柔らかくて抱き心地良いんだもん…」
嬉しそうに頬ずりしてくる朔間くん。私はされるがままに頬ずりに耐える。
「うぅ、うう~!!」
「好海可愛い」
「わかったから!」
「大好き」
「……ハイハイ」
朔間くんは私のことが好きらしい。でも私がそれを知ったのは真くんと付き合ってからで。
朔間くんを拒むということもしずらいのだ。こうしていつもされるがまま。真くんに悪いと思うし彼が良く思っていないのも知っている。
「好きだよ。大好き。」
「もう…………わかったよ。お皿、運ばなきゃ。」
朔間くんは名残惜しそうに私をはなして用意されていたお皿を持ち上げた。私も落とさないようにゆっくりと持ち上げた。