第63章 死なばもろとも 佐賀美陣
「何でそんなにSNSに固執するわけ?俺、正直あれの良さわかんないんだよね」
ご飯を食べ終わったあと、彼は私に聞いてきた。
「言ったでしょ、SNSは私なの」
「……プロフィールとか、履歴とか書いてあるから?」
「そう。誰にも見られない私のスケジュールとか、全部保存してある。とは言っても陣くんは見なかったみたいだけど。今日何してる?とか、こまめに陣くんは聞いてくれるから。そんなことをする手間が省けて良いと思ったんだ。」
私はデザートに桃を出した。つまようじに指したそれを口にはこびながら話しは続く。
「あと、いつでもそこにあるならいちいち記憶にいれなくていいでしょ」
「ふーん………」
桃が砕ける音と静かな話し声がリビングに響く。
「でも…………あんずちゃんのこと、記憶にいれておきたいとか思うよ」
「変わってるね」
「え?」
「無駄なことを覚えるのはスマートじゃない。」
私は桃に手を伸ばした。
が。
その手は、陣くんにつかまれた。
私が驚いて視線を彼にやると、真剣そのものの顔が見えた。
「無駄じゃない」
アイドルとはまた、違う顔。
「俺にとっては大切なんだよ」
陣くんは、低い声で言った。
あぁ、やっぱり良い声。
ねぇ陣くん、気づいたかな。
あの時、私ね。本気でそう思ったから君の声をほめたんだよ。