第62章 オタクと忍者 仙石忍
忍くんは大人しく、ただただ呆然としていた。私なんて顔面蒼白でちょっと情けない。
あぁ、でも許してほしい。こんなことになったらこれが当然の反応だと思う。
「せ、拙者、シュタタタッとひとっとびするでござるよ!!」
「そのあと二度と君に会えない気がするからやめてね」
「うッ……確かに、この高さは……ッ…!」
いやでも行ける気が……ッ!とまだ粘るので頑張って説得を繰り返した。
何とかお願いを聞いてもらい、二人で屋根裏部屋に大人しく居座る。しかし彼はどこかしゅんとしていた。
「落ち込まないでいいよ、人間にできないことは人間じゃない人に託しましょう。」
「………あんず殿、人間じゃない人って何でござるか」
「……………何なんだろうね」
私は苦笑した。……ダメだ、どうしたらいいんだろう。
「……忍者はすごいでござる、何でもこなしてしまうからして。」
「…………………そうだね。」
それに引き換え、と彼の言葉は続く。悲観的になる彼にかける言葉は、私にはそう多くない。
「忍くんにできて忍者にできないこと、忍者にできて忍くんにできないことの数に違いはないと思うけど。」
「……そうでござるか」
忍くんは眉を下げて笑った。私なりに励まそうとしたけれど、逆効果だったのだろうか。
「………………そっか。」
私は何となくそれを察した。
「ごめん、忍者は君の憧れだったね。」
「あ、ああいや!!そんな、全然ッ!!!ご、ござるッ!!」
慌てすぎて変な語尾になっていた。私はたまらず吹き出した。
忍くんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしていたが、私につられてか今度こそ笑ってくれた。